嘘か真か
夜、引き戸を開けると空には満天の星空とぽっかりと丸いお月様が浮かんでいた。
「はぁ〜…綺麗な星」
天の川まではっきり見える。写真の天体を見てる気分だ。そういえば外灯がなければ星はもっと見えるんだって田舎のおばあちゃんがいってたなぁ。まさにその通りだ、といわんばかりの星空に満足したは静かに戸を閉め、勝手場に向かった。
最近ちゃんと場所を覚えた勝手場に入るといつもの賑わいが嘘のように静まり返っていた。転ばないように手探りで水がめまで進み杓子で水を掬う。
夜の水は特に冷たい気がする。でも今のにとっては丁度いい冷たさだ。食道に通っていく感覚に目を閉じるとギシ、と床を踏みしめる音が聞こえた。
「誰だ?」
「政宗さま?」
「か?」
お互い驚いたような声をあげた。まさかこんな夜更けに(といっても多分まだ11時くらいだけど)政宗が現れると思ってなかった。まさか自分のように目が覚めてしまったのかな?と考えていると政宗の足音がこちらに近づく。
「What happened?」
「私は水が飲みたくなって…政宗さまこそどうしてここに?」
近づくと政宗の白い夜着がぼんやり見える。問いに水がめを見ながら答えれば鼻先に何かを近づけられ目を瞬かせた。
「俺はこれだ」
「…あ!お酒だ!」
「That's right!」
力強く聞こえる声には思わず笑ってしまう。どうやら小十郎に隠れて呑む気らしい。「お前も来るか?」という誘いに眠気が飛んでいたは快く頷いた。
月が綺麗に見える縁側に並んで座り込んだ2人は仲良くお酌をして月見酒を楽しんでいた。最初が呑みたいといった時、政宗は驚いて、それからニヤリと笑ってお猪口を寄越してくれた。
「小十郎には内緒な」という囁きと一緒に注がれた液体は月に反射して、ゆらゆら輝いてて綺麗だ。
「はぁ〜、美味しい」
「Don't force yourself.明日起きれなくなるぜ」
「わかってますって。自分の限界くらい知ってますから」
「Really?お前その年でどんだけ呑んでるんだよ…」
呆れた顔で見てくる政宗には笑ってお猪口に口をつけた。元の世界ではそれなりにお酒を呑んでいた。中でも東北の日本酒が好きで飲めそうなのがあればちびちびやっていたのだ。まぁ金銭面とか場の空気でもっぱらビールを飲んでたけど。
喉を通る引き締まった味にやっぱり東北の水はいいなぁ、と思った。南も美味しいけど少し緩いもんなぁ。
「あ〜これで漬物か枝豆あるといいですよね〜」
「…漬物か。悪くねぇな。枝豆は塩茹でにするとして…」
ゲソでもいいけど、と親父臭いことを考えていると政宗の視線を感じ顔を見合わせた。すると彼の手が伸びの目尻を親指で拭って、それを何故かぺろりと舐めた。
「政宗さ、ま…?」
その一連の動きに目を瞬かせていると腕をとられ、引き寄せられる。その反動でお酒が足に零れた。ああ〜勿体無い、と視線を足に向けると更にくっつけるように政宗が肩を引き寄せの頬に彼の胸板が当たった。
「ったく、不器用なgirlだな。お前は」
「え…?」
「Relieve.俺がいる」
ぽんぽんと、頭を撫でられは息を飲んだ。いい加減忘れたと思ってた。新しい環境と仕事に追われて夢なんか見る暇なかったんだ。政宗も小十郎も周りの人達もいい人ばかりで布団も食べ物もちゃんとあって何一つ不自由がないのに。
なのにあんな夢を見ただけで、思い出すだけでこんなにも不安になってしまうなんて。
「ダメですよ、私を甘やかしちゃ。ろくな人間になりませんよ」
「Ah〜そうなったら俺がちゃんとResponsibilityをとってやるよ」
不安を誤魔化すように茶化す言葉を投げれば直球で返された。責任を取ってやる、なんてまるでプロポーズみたいじゃないか。大きく目を見開いた顔でいった相手を見やれば慣れてる顔で微笑み肩を抱きこんだ。なんだ、冗談か。
「あと2、3年ってところか。楽しみにしてるぜ」
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2011.04.24
英語は残念使用です。ご了承ください。
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