とばっちりだ




「はぁ〜、はぁ〜」

ピカピカになった廊下の隅で雑巾を絞ったはかじかむ手を温めるように息を吹きかけた。
日も大分昇り、吐き出す息も白くなくなったものの10月後半の奥州は真冬かと思うほど寒い。温暖化で雪が降らない!とニュースでいってた頃が懐かしいよ。そう考えなら足も擦り合わせるように動かす。

外に面した廊下では動いて温まっても素足ではすぐ冷えてしまう。仕方ないか、と少しは動くようになった手を確認しては濁った水が入った桶を抱えた。
草履を履き、庭先の木に濁った水を流す。最初はこんな汚い水を植木にやっちゃまずいでしょーよ。と思ったけど教えたのが女中頭なので大人しく従うことにしている。

「まぁ、洗剤を使ってないんだし毒にはならないか」

そう、ぼそりと呟いた。
じわじわ染み込んでいく水をしゃがんで眺めていると、じゃり、という音が聞こえた。
それで視線をずらせば誰かの影。誰だろうって振り返ろうとしたら両脇に太い何かが入り込み腹でホールドされそのままの身体が浮き上がった。


「ひぃあああああああっ」

いきなりのことで思わず悲鳴をあげると後ろから震えるように笑う声が聞こえた。後ろを振り返ろうとしたけど具足しか見えない。でも、この太い腕は。


「久しぶり!元気にしてた?」
「成実さま!」


やっぱり!近すぎて久しぶりの再会を喜んでるのか遊ばれてるのかわからないがこの荒い抱き上げ方は政宗の従兄弟の成実だ。冬支度前の顔見世で大森城から成実らが来るというのは聞いていたがこんな早くから来るとは思っていなかった。

宴会は早くても夕方なのに…。


「し、成実さま…っ放してくださいぃ」
「相変わらず軽いなぁ。ちゃんと食べてる?」

話を聞かないところも政宗そっくりだ。違うのは政宗よりもちょっとやそっとでは逃げれないがっしりした身体というところ。骨太というか筋肉ダルマというか…。政宗のイケメン顔をちょっと横に伸ばした感じ?あ、でも政宗よりは温和な顔してるな。

この人はきっと私を猫か何かと思っているんだろう。宙ぶらりんのまま嬉しそうに頬擦りしてくる成実には昨日爪を切るんじゃなかったと後悔した。


「し〜げ〜ざ〜ね〜」
「「!?!」」
「…テメェ、俺のKittyで何遊んでんだぁ?」

地を這うような低い声にビクッと成実と一緒に肩を揺したの顔が引きつった。成実に抱えられてるせいで強制的に後ろを振り返るとパリパリと放電気味の政宗が私達…もとい、成実を睨んでいた。政宗の後ろでは小十郎さんが溜息を吐き額を押さえてる。

の頬にまで来るピリピリとした感覚に泣きたくなった。私、悪いわけじゃないに。


「ま、待て梵!俺はと再会を喜んでただけであって」
「Shut up!言い訳なんてみっともないぜ。成実ぇ」
「あわわっ」


スラリと抜いた刀にと成実の顔色が一気に青くなる。というか成実!早く放して!!私はまだ死にたくない!


「Are you ready?」
「「ノォォーーーーーーーーっ!!!!!!」」




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2011.04.24
成実の位置はこの辺で(笑)

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