破廉恥な会話をする大人達




〜!!久しぶりだな〜!!会いたかったぜ〜!!」
城に足を踏み入れると早速そんな声とドタドタという音が聞こえ足が宙に浮いた。

「ぐぇ。し、成実さま…っお久しぶりです」


お腹に回った腕に圧迫されながらも挨拶すると「相変わらず軽いなお前は〜」と嬉しそうに振り回した。そういうの本当やめてほしい。私は猫か。

「成実。であまり遊ぶなよ。政宗様のせいで疲れているんだ」
「梵…?」
「俺は政宗様のところに行ってくる。しばらくを預かっておいてくれ」

頬擦りしてくる成実にいつもなら「いい加減にしろ」と引き離してくる小十郎も、今は政宗への説教が優先事項なのかとの戯れをスルーしてさっさと廊下を渡っていってしまった。

ていうか、小十郎に誰かオブラート教えてあげてください。何でこんなオープンなの?


。もしかして昨日"夜這い"されたの?」
「……」
「それで"また"屋根に穴を開けたとか?」
「…違います」

宙ぶらりんに抱えられながらじろりと抗議の意味を込めて成実を睨むと「だよなー」と笑われました。「顔が赤いから威力半減してる」とかわざわざいわなくていいから!睨んでもはじめから成実に通じないってわかってたよ!
赤くなったまま苦い顔をすれば成実はまた笑って「ももうそんな年かー」と感慨深く呟いた。

そしてを抱えたまま成実はその足で綱元の執務室に向かうと彼の了解も特になく座り込んだ。足の間に座らされたはとても居心地が悪かったがお腹に回された手が逃してくれなかったので諦めている。



「十日ぶりだな」
「はい。綱元さまもお元気そうで何よりです」
「そんな挨拶よりも聞いてくれよ!梵ってばまたのこと夜這いにいったんだって」
「ちょ、成実さま?!」
「小十郎がいないことをいいことにに好き勝手してるのを見れば一目瞭然だな」
「え、何その目…もしかして、告げ口したりしないよね?」
「どうだろうの?」

ニヤニヤとこっちを見ながら報告する成実にまた睨んだが効果は一切なかった。悔しい。その代わりに綱元が成実に軽蔑に近い視線をくれた為、成実は大人しくを膝からおろした。告げ口されるのは困るらしい。

渋々放された手にはすかさず綱元の隣に移動すると成実は今にも泣きそうな顔になる。嘘泣きなのはお見通しなんですよ。その手にはもう乗りません。

「…だがそうか。もうそんな時期か」
「今、13だっけ?」
「はい…(多分)」

正直今の自分の年齢はわからない。数え年なら13〜14歳くらいでいいんだろうけど。


「出会った頃はあんなひょろっこかったけど大分肉付きよくなったもんな」
「背も伸びました」

横ばっかじゃないやい、と言い返せば成実は目を丸くして、それからいやらしい顔でニヤニヤ笑うので綱元の後ろに隠れた。

「これ成実。をからかうな」
「いいだろ?これで梵の嫁さんになったらこんな風に遊べなくなるんだからさ」
はお前の玩具じゃないんだぞ」
「小じゅ…父上にいいますよ」
「うわーその呼び方されると急に寒気を感じるな」
小十郎も遊ぶなっていってたじゃん、とじと目で見れば成実は引きつった笑いを浮かべた。



違和感はだって感じている。親子になったとはいえ、元々はキャラとして、それから自分に近い年齢の男性として見ていた彼を「父上」なんて呼べなくて。冗談でなら何度かいえていたがいざ本当に呼べるようになってからは逆にいえなくなってしまった。

それではいけない、ということでこういった公の場ではちゃんと呼べるように頑張っているが小十郎と2人きりの時や心を許してる人達の前だとどうしても「小十郎さま」と呼んでしまう。

追々慣れていけばいい、という小十郎の言葉に甘えさせてもらったがいつかはちゃんと呼べるようにならないとな。


。小十郎から婚儀の話は聞いたのか?」
「いえ、特には」

むしろ佐和さん達女性陣に色々聞かされたけど。あることないことを吹き込まれ、それを遠い目で思い返していると顔を見合わせた2人が難しい顔で溜息を吐いた。

「小十郎の奴、嫁に出す気ないんじゃないか?」
「綱元もそう思う?俺も今そう思った」
「え?」
「こんだけ通われてんだから"お手つき"されたも同じじゃん?逃げようなくね?」

なぁ、とこっちに同意を求めてきた成実には思いきり顔をしかめると、空気を読んだ綱元が目で成実を黙らせた。


戦国時代のこういった感覚はあまり理解できていないがの結婚時期は既に始まっているらしい。ちなみに由緒正しい武家は8歳くらいからとかいうから恐ろしい。政略結婚恐ろしい。

そんな小中学生…といったら政宗の見方が変わりそうだから控えておくけど、見初めた相手を夜這いするのは結構スタンダードな話のようだ。武家ともなれば正式な儀式を組んでのものが主流らしいけど政宗を見る限り控えるものでもないのかも。

現に成実も夜這いに行った話をしてるし。いやそれ、聞きたい情報じゃないし。何でそんなオープンなの。



「正式に"お手つき"をされていないから渋っているのか?」
「んなこといったって梵はを手放すとは思えねーぜ?なんせ奪還する為に大阪まで行ってるんだから。それにお手つきはあれで十分だろ?」

オープンな話から逃れられないまま聞いていると成実がの首を指してきたので慌てて手で隠した。手の下には政宗が残したキスマークがあって、「この頃もキスマークがあるんだ〜」なんて感心していた頃が懐かしい。こっちを見てくる4つの瞳に顔だけが熱くなった。

ここまでくれば説明も不要だろうが"お手つき"は情事を行った時に使う言葉だ。それが結婚指輪代わりらしい。ただ、本当に"お手つき"されたかといえば微妙なところもある。
中身が大人、ということもあり一通りのことを理解しているからいえることだが、実は最後まではしていない。


前に流れに任せてそれをしようとしたが、あまりの激痛に雷が落ちて危うく2人共死ぬところだったのだ。それを聞いた成実は爆笑して、綱元は苦笑し、現場と穴が開いた屋根を見た小十郎は呆気にとられ、そして鬼の形相と化した。

正直思い出したくない事柄でもある。

それでも懲りずに来てくれる政宗には惚れ直したが自分の抱えてる事情を考えると小十郎が渋るのもわからなくもなかった。


「…多分、力のコントロール…制御が出来ないうちは政宗さまに迷惑をかけるだけだから嫁がせないつもりなんだと思います」

大人と子供の体格差だったとはいえ、普通に大人同士でも痛いは痛いのだ。それでも好きだと突き進んだとして、雷が落ちて死んだら身も蓋もない。ただの笑い話だ。

「まぁ確かに最中に雷落ちてきたら困るわな…」
「これ成実!」
「けどさ、梵も諦め悪いから色々試すと思うぜ?」



力の制御も大事だけどさ、と笑う成実はニカっと白い歯を見せると「この前梵が取り寄せた本をこっそり見ちゃったんだけどさ」とやや興奮気味に続けた。

「色事にも順序ってのがあるんだって。女のどこに触れれば気持ちいいかとか、どうしたら気をやるほど夢中にさせられるか、とか。なんとなくわかってたこともあったけど知らないこともあったりして面白かったよ。あの本。さすがは松永久秀だな」
「ぶっ!!」

指摘することを諦めたは置きっぱなしだったお茶を入れ、2人にも配った。自分もとお茶をすすったところに爆弾を投下されたは思わずむせ返った。

何をやってんだあのダンディドSヒロシは!




-----------------------------
2018.10.28
厳密には曲直瀬道三が松永に贈った指南書(黄素妙論)ですが松永もなんか書いてるとかどっかのサイトに書いてたので(笑)BASARAの松永なら書いてくれそうと思い(笑)

TOP