□ 優越感 - In the case of him - □
「ねぇ亜子ー」
「んー?」
昼休暇、教室の窓側の席でぼんやりと宍戸くんにメールを作成していれば、同じようにメールをしていた早百合が画面を見たまま話しかけてきた。それ自体はいつものことなんだけど隣から妙に幸せオーラが飛んできて思わず横目で見てしまった。
「昨日さ。ついにしちゃった」
「は?」
何の話?と訝しげに彼女を見れば、早百合は上機嫌に「もう!わかってるくせに!!」と勢いよく亜子の腕を叩いてくる。それが結構痛くて顔を歪めたが早百合は気づかないようで「だーかーら!」と叩きながらもったいぶってくる。
だから何よ?とニヤニヤ顔の早百合を見れば耳元で「景吾とエッチしちゃった」と告白してきた。
「ええっ?!」
「シー!!声が大きい!」
人差し指を立てて周りを見たがそもそもいったのはそっちじゃないかと思った。というか友達が男友達とそういうことに至ったという話に亜子は思わず顔が赤くなった。何でそんな話を私にするわけ?!
「亜子だって宍戸くんとエッチしたらいいたくなるよ!」
「い、いわないわよ!」
あなた達まだなんでしょ?と聞いてくる早百合に確かにまだしてないけどそんなことを報告するわけないでしょ!と思った。
何をいってるのよ!と真っ赤な顔で怒れば「亜子って処女?」と早百合がきょとんとした顔で明け透けに聞いてくるので唖然とした。
「ささささ早百合?!」
「あはは!図星だー。亜子も早く捨てちゃった方がいいよ?大好きな人にあげるのって凄く幸せだと思う」
「……」
「景吾に大事にされてるなーってわかるの」
さっさと宍戸くんとヤっちゃえ!と励ます早百合に亜子は何もいえなくて顔をしかめるしかなかった。
そんなの人それぞれなんだから他人に言われる筋合いはないのに、妙に出遅れた感じがして複雑だった。
「きっとも処女だよねー」
「……知らないよ」
しかも何で他の友達の性事情まで考えなくちゃいけないのだろう。訝しげに早百合を見たが彼女の横顔からは何も伺えなかった。
ただ、どこか嬉しそうに笑っているのがとても印象的だった。
2016.01.15