You know what?




□ ひどい話 - In the case of him - □




ロッカーと机の中を覗き込み何もないことを確認したはホッと息を吐いた。こういう生活は中学最後に経験したけど、まさか高校になってもやることになるとは思ってもみなかった。
まあ、原因が原因だからどうしようもないのだけど精神的な何かが削られていくのだけはわかる。勉強と部活だけでも大変なのに本当勘弁してほしい。


!おい!」
「ん?………げ、」

椅子についてた怪しげなインクを落とし座ろうとしたら聞き覚えのある声が自分の名前を呼んだ気がして振り返った。振り返って顔が引き攣ったが呼んだ相手は気にしてないみたいでこっちに来い、というジェスチャーをして階段の方へと行ってしまった。

アイツ、今の状況わかってて呼び出したんだろうか…?
一応クラスのみんなに見えないように隠れて呼んだけど赤頭は隠しようがないと思うんだよね…。

できればこのまま次の授業を受けたかったのだけど来なかったから部活の時へそ曲げられそうな気がしたので仕方なくは溜息混じりに教室を出たのだった。


「誰にも見つかってないか?」
「多分大丈夫だと思う」

階段を1段飛ばしながら踊り場まで駆け上がると赤髪の持ち主である丸井は辺りを警戒するように見回しを見た。そう思うなら呼び出しなんてしなきゃいいのに。
「幸村とすれ違ったくらいであの人達にはバレてないと思うよ」と素直に答えれば「あ、ヤベ。幸村くんに怒られるかも…」と青い顔で我に返っていた。

「それで、何の用なの?急ぎ?」
「あー…いや、急ぎじゃねぇんだけどよぃ」


今私達が2人きりで会うことがどれだけリスクがあるか丸井も十分わかってるはずなのだが、当の本人は小首を傾げて見つめるから視線を逸らすと宙を舞うように目線を動かし首を掻いた。

暑そうに頬を染める丸井に具合でも悪いのだろうか?と考えていると彷徨っていた目線がチラリとこちらに向いて「その、大丈夫か?」とおもむろに聞いてきた。



「…大丈夫だけど、間違いなく部活で幸村と柳に小言いわれるだろうから最終的には大丈夫じゃないだろうね」
「わ、悪ぃ」

それでなくても柳から2人きりの接触を禁止されているんだ。あーもしかしたら仁王にも文句いわれるかも。この前丸井のファンに絡まれた時助けてもらったからなぁ。そういえばお礼もしてないや。

顔色悪げに謝ってきた丸井に用がないなら教室に戻ろうか?と口を開こうとしたら丸井の手がの髪に触れた。その手は髪を撫でるように動き一束の髪をすくって指を絡めている。


「その、わかってはいるんだけどよ……何もしねぇのって、妙に気になってさ。お前のこと心配だったし、別に、俺が悪いわけでもねーんだけど、でもお前も悪くねぇしさ」
「う、うん…」
「他人のせいで、こういう時間邪魔されんの、嫌じゃね?」
「…うん……?」
「早くお前と普通に話してぇのにさ。マジやってらんねぇよな」

それはそうなんだけど、そもそもアンタがファンを焚きつけなければここまで被害が拡大してなかったと思うんですが…。まあ、本人からしてみればただのリップサービスで勘違いしたファンの子達が悪い、と思ってるのかもしれないけど。

そもそも、丸井と恋仲だなんて誰が思ったんだろう。丸井には彼女だっているし、自分はもう仁王の時で散々懲りたのだ。イケメン集団に恋をしたらどうなるか、自分の身の程を嫌というほど理解した。ただ同じ部活だからってだけで変な噂たてないでほしいよ。

そんなことを考えながらの髪をずっと弄ってる丸井を眺めているとビクッとその手が止まり奴の眉間に皺が出来た。


「彼女?」
「うん……用があるから来てくれって」

携帯を確認した丸井に聞くと行くのが嫌そうな声色で返してきた。彼女の連絡に溜息まで吐くなよ。

「じゃあ、急いで行きなよ」
「……」
「……な、なに?」

何で睨まれてんの私。何か気に障ることでもいったのか?と首を傾げれば丸井に軽く髪を引っ張られた。



「痛っ」
「…ったく、は全っ然男心ってのがわかってねーよな」
「はぁ?」

何それ?1人プンスカ怒る丸井を訝しげに見れば奴は更に不機嫌な顔になって「もうテメーの心配なんかしてやんねーよぃ!」と捨て台詞を吐いて去って行った。…丸井、それもう5回くらい聞いてるんだけど。

一体なんだったんだ?どかどかと階段を下りていく丸井の後姿を不思議な気持ちで見ていれば、上の方で誰かが来る足音がして顔をあげた。


「早百合…」
「見ぃちゃった」

上の階の手すりに寄りかかったまま見下ろす早百合にギクリと心臓が跳ねる。見たって何を?そんなの決まってる。丸井と一緒にいるところだ。それは困る。
早百合は知らないだろうけどそんなことを広められたら幸村達どころか丸井のファンの子達との折り合いも更に悪化してしまう。それを想像して顔色を悪くすると早百合は笑って「冗談だって」と階段を下りてきた。

にはジローくんがいるのにね」
「早百合。それは違うって」
「うん、知ってるー」

とジローくんが付き合ってないのわかってるよ。と笑う早百合にホッとしていいはずなのに何故かムッとしてしまった。言葉を遮られたせいだろうか。


って本当みんなにからかわれるよねー。からかいやすいのかな?」
「……さあ?」

なんとなくバカにされてるみたいで、居心地悪く視線をずらすと手すりに乗ったままの早百合の左手にきらりと光るものが見えて目を見開いた。

「早百合、それって」
「あ、わかっちゃった?いいでしょー」

見て見て!と嬉しそうに掲げた左手薬指には銀色に輝く指輪があった。それはとてもシンプルだったが早百合の指によく似合っていて、あたかも結婚した花嫁のように幸せそうに微笑んでいた。



「うふふ、景吾がね。誕生日にくれたの」
「そっか。よかったね…」

幸せ絶頂期です、と言わんばかりに花を飛ばす早百合をは抑揚なく返した。視線は彼女の左薬指に張り付いたままだったが不思議と何も感じなかった。
「しかもね、これペアリングなんだよ」とわざわざ見やすいように左手を差し出し指輪をキラキラ反射させていたのは鬱陶しかったが。

それでも以前ほど胸が異様に締め付けられたり苦しかったり頭に血が上るほどの感情の起伏は感じられなかった。いうなれば沈黙。言葉が中にまで届かない感じだ。


「でもさ。つけてるのはいいんだけど先生に見つかったら没収でしょ?だからちょっとドキドキでさ」
「…学校にいる時くらい外したら、ダメなの?」
「えーっダメだよーっ景吾がつけてろっていったんだもん!」

景吾もつけてるのに私だけ外すわけなじゃん!と笑われは内心ケッと悪態をついた。あーそうですか。でも跡部さんが学校でつけてるかどうかなんて知らないでしょ。
面倒くさいな、と教室がある方に視線を向ければ、「あ、でもネックレスにしたらバレないか!」とかいってにその案はどうかと聞いてくる早百合に名案じゃないか?と適当に返した。

どうせ跡部さんに相談した答えが総意なのだから私の話を聞いても意味はないだろう。ペアリングとかお揃いの何かとかつけなきゃ彼氏彼女だって思えないようなカップルには絶対なりたくないな。


そろそろ予鈴も鳴るし教室に戻ろうと階段を下りれば早百合も並んで降りてきた。教室は同じ階だから一緒なのは仕方ないけど何でこっちをジロジロ見てるんだろう。何でニヤついた顔で見てるんだろ。

「…何?」
「ん?んー実はさ。もうひとついいことがあったんだぁー」

クスクス笑う早百合には内心イラっとして顔をしかめたが彼女は気にした素振りもなく、むしろ更に嬉しそうに笑って、というかニヤついた顔で「うーん。どうしようかなー」と考える素振りをしていた。


「教えてもいいけど、はお子様だからなぁ」
「?どういうこと?」

意味深だけどよくわからないことをいう早百合に訝しげな顔で問えば、彼女はまた嬉しそうに「やっぱ、おーしえない!」とクスクス笑うのだった。



******



日差しが強いこの時期に外を走り回らなければいけないはうんざりした顔で燦々と照りつける太陽を見上げた。眩しくて目が眩むよ。

さーん。太陽見ても暑苦しいだけで仕事終わらないよー」
「うん。わかってはいるんだけど…」

はぁ、と溜息を吐けば隣で同じように汗だくになりながらも一生懸命手を動かし洗い物をしてる瀬尾さんがいた。彼女は氷帝テニス部のレギュラーマネージャーだったりする。担当は岳人くんだ。


高校になっても個別にマネージャーがついてると聞いて丸井達は羨ましそうにしていたが統括してるのが渡瀬さんと聞いて開いた口を閉じていた。渡瀬さん苦手だからな丸井と赤也は。
そのとっつきにくい(主に丸井達が)氷帝マネージャーの中でも人懐こいのがこの瀬尾さんだったりする。

彼女は高校から入ったクチで世間話が好きなタイプ。放っておくと延々と喋ってるのだが渡瀬さんの教育的指導のお陰で仕事は誰よりも速いみたいだ。今もがぼんやりしてる間に3枚くらいタオルを洗い終わっている。


「ちゃっちゃとやってみんなと合流して休憩とろうよ」
「そうだね」

現在は汚れたタオルを片っ端から洗っている。そしてあまりにも暑いから濡れタオルを所望されたのだ。も急いでタオルを洗っていると少し離れたところからボールを跳ね返すインパクト音と掛け声が聞こえてくる。

この暑い時期に合宿なんてアホじゃないかと仁王がぼやいていたが、監督の意向ではどうしようもない。


関東大会の結果を見て柳や先輩達が懸念し強化合宿を計画したのが始まりだった。その後に控えてる全国大会のこともあるのでそれに関して異論はなかったのだが、丁度タイミングよく氷帝から合同合宿の申し入れがありいい機会だからと監督がそれを引き受けてしまった。

それを聞いて駄々をこねたのは幸村だった。も内心嫌だなぁと思っていたので幸村の加勢をしていたのだが、立海のレベルに見合う高校は近場だと氷帝しかいなかったのと、先輩達と監督が全国の前にデータをほしがったことが決め手になり、神の子の我儘は奇しくも通らなかった。



今頃すこぶる機嫌の悪いテニスしてるんだろうなぁ、と思ったがこのカンカン照りの日差しを見上げ体調云々を持ち出して休憩してるかもしれないな、とも思った。
幸村が入院してたことは周知の事実だからその辺優遇されてるんだよね。羨ましいことだ。

伝う汗を拭い纏わりつく熱気を押し返すように息を吐いた達マネージャーは現在3分割で動いている。渡瀬さん達はコート内、皆瀬さん達はコート外、達は水周りの雑務だ。
時間ごとにぐるぐる回すみたいなことをいっていたけど精神的にはとても助かる位置だなと思っている。肉体労働は否めないけども。


「あ、そういえばコートの外に立海生いたけどあれってもしかしてファンの子?」
「あーうん。そんな感じ」
「氷帝も同じだけど立海も煩いね」

鬱陶しくて練習はかどらないんじゃない?と笑う瀬尾さんに「男共ハアレデパワー貰ッテルラシイデスヨ」と赤也がいっていたことをまんま伝えれば「向日も同じこといってたわ」と苦笑した。似たもの同士だったのねあんたら。

「私は無理だなー集中できない」
「私も」
「それに煙すらないとこでケンカ吹っかけてくるし。跡部部長が"雌猫"っていってるのもなんとなくわかるかも」

最初聞いた時はドン引きだったんだけどねー、と笑う瀬尾さんにも笑って同意した。雌猫さん達は異常なほど好戦的だからね。発情期かってつっこみいれたいくらいだよ。


「そういえば知ってる?跡部部長、婚約者いるんだってよ」
「へ?!婚約者?!」

丸井のファンもどっかに消えてくれないかなぁ、とどんより考えていたら思ってもみないフォークボールを投げられ変な声をあげてしまった。跡部さんに婚約者?寝耳に水なんだけど。

「だよね!ビックリするよね?!私も聞いた時ビックリしたのに渡瀬ちゃんとか全然ピクリとも反応しなくてさー」
「渡瀬さんはそうじゃない?大抵のことは知ってるし」
「それにしたって余裕過ぎだよ。あ、もしかして部長の婚約者って渡瀬ちゃんなのかな?」
「え?!そ、そうなの?!」
「…そう思いたいんだけど、違うって喋った時にいわれたんだよねー」
「そ、そうなんだ」



よかった。なんとなくそう思ってホッと息を吐いたが根本的な解決に至ってないことに気がつきはタオルを握り締めたまま瀬尾さんを見やった。

「その婚約者って、ほんとなの?」
「うん。本当だよ。忍足くんと向日が話してるとこ盗み聞きしたから間違いない」
「間違いないって…それ大丈夫なの?」
「…だいじょばない。でも、部長の浮気話よりはマシじゃないかなー」
「う、浮気…?!」

盗み聞きなんてしたら忍足くんとか凄く嫌がりそう、と思っていたら瀬尾さんも「そのお陰で忍足くんに目ぇつけられてるんだよね…」と遠い目をしていた。うん、その顔は大丈夫じゃないね。

前々からピンクな噂は聞こえていたし仁王や丸井でそれなりに耐性はついていたと思ったけど改めて、しかも氷帝生から聞く噂は妙に色濃く響いての心をかき乱していく。婚約者なんて初めて聞いた。しかも跡部さんが浮気…。


「今年の3月くらいだったかな。いや期末前くらいか?なんかね。その時に浮気の噂が流れて、その日の部活の時部長のほっぺたが真っ赤に腫れてたんだよ」

あれ痛そうだったなー、と顔を歪める瀬尾さんには呆気に取られていた。跡部さんも叩かれることあるんだ。しかも浮気で。なんか色々ショックだ。


「しかもさ」
「まだ、あるの?」
「あるある!どうやらその時部長3股してたらしくてさ。結構大騒ぎだったよ。あ、その時だったなぁ婚約者の噂が出たのも」
「へぇ…」
「しかもその婚約者が高校上がった時にはもう決まってたっていうじゃない?その時氷帝で付き合ってた子とかファンがすっごい怒ってさ。そのせいで跡部部長何日か学校休んでたんだよね」

欠席理由は海外勉強の為とかいってたけど。と聞いてそれは知ってる、と思った。
そういえば久しぶりに集まりに行った時跡部さんに会ってイギリスに行ってテニスやらあちらの大学の話を聞いた気がする。
大学は海外に行くかもしれないといってて「そうなんですね。頑張ってください」とはいったけど、その頃にそんな騒ぎがあったのか。そういえばあの集まりの時早百合来てなかったな。



「…今は落ち着いてるんだよね?」
「そうじゃない?3股してた相手とは別れたみたいだし、今付き合ってる子いないはずだよ」
「そうなんだ…」

いないんだ…。ということは跡部さん指輪つけてないんじゃないだろうか。早百合はあんな嬉しそうに指輪を見せてきたのに。それを思い出し何か嫌だなと思った。
没収されないように外したり、部活でなくさないように外すのはわかるけど、でもそれは早百合の気持ちを蔑ろにしてるような気がして不快だった。

最後のタオルを絞ったは出しっ放しにしていた水を止めた。別に、私には関係ないからどうでもいいんだけど。

「私らじゃ婚約者って聞いてもピンとこないけど、でも、婚約者って結婚相手でしょ?その相手がいるのに浮気とか3股とかされて嫌な気持ちになったりしないのかな?」

というか跡部部長もその辺どう考えてるんだろうね。そんなことをぼやき瀬尾さんは「これで終わり!」と絞ったタオルをカゴの中に投げ入れた。
私も知りたいよ。跡部さんが何を思って婚約者の前で浮気をするのかも、どんな気持ちで早百合と付き合ってるのかも。


大量に入ったタオルのカゴを2人で持ちながら別の場所へ移動していると瀬尾さんが熱そうな顔で「そういえば、」と付け足した。

「付き合ってる子いないっていったけど、セフレは何人かいるって聞いたかも」
「………」
ー!」

がちゃがちゃと取っ手の接合部を軋ませながら歩いていればコートの方からふわふわの髪を揺らしたジローくんが走ってくるのが見えた。ジローくんの後ろには忍足くんの姿もあって、同じように視界に入れた瀬尾さんが「うげっ忍足くんなんでこっちに来てんの」と嫌そうな顔をした。



達も休憩するようにって監督からの伝言ー水分取らないと熱中症になるって」
「ジローくん達は水分取った?」
「俺らは小まめにとっとるから問題ないで。それよりも仕事熱心なマネージャー達の方が水分とってないやろ?なあ瀬尾さん」
「お、ほほほほほっ」
、顔真っ赤じゃない?大丈夫?」
「……っうん。大丈夫」

小走りにやってきたジローくんから少し遅れて覗きこんできた忍足くんに瀬尾さんはたじたじになっていた。どうやら瀬尾さんは忍足くんのことがかなり苦手らしい。おほほほ、なんて笑い方マンガ以外で初めて聞いたよ。


他にも色々やらかしてそうだなぁ、と思いつつ眺めていると、頬を伝っていた汗を拭われビクッと肩を揺らし距離をとった。どうやらジローくんがの汗を拭いてくれたらしい。
あまりの驚きようにジローくんもビックリしたみたいでタオルを持った手がそのまま固まってこっちを見ている。その視線には何だかとても居心地悪くて逃げるように目を泳がせた。

、どうし」
「瀬尾さん。まぁた余計なこと、くっちゃべっとらんよなぁ?」
「な、ななな何のことかしらっねぇさん?!」
「う、うん。そうだね……あっ私らの水分あっちに置きっぱなしだからそれ取ってこないと!行こうか瀬尾さん!」
「そうね!そうしましょ!!」


の反応に違和感を感じたらしいジローくんが発した言葉は威圧的な忍足くんに掻き消され、で視界の端に跡部さんを見てしまい、文字通り脱兎の如くタオルが入ったカゴと瀬尾さんを引っ張りその場から逃げ出した。



本当はこのまま家に逃げ帰りたい気持ちでいっぱいだった。

浮気って何?同時に何人も付き合ってた?婚約者?セフレってどういうこと?男女の付き合いなど無知同然のにとって瀬尾さんの言葉は刺激が強すぎたのはいうまでもない。

噂の信憑性を考えることもなく、理解できることもなにひとつなくて不快さだけが胸をしめていった。
早百合に対する跡部さんの行動がそのまま自分も当てはまるんじゃないかって、そう思ってしまったら異常なほどに怖くなって苦しくて泣きそうだった。

跡部さんがわからない。
跡部さんのことを理解しようだなんて到底無理だとわかっていたのに悲しかった。



ああ嫌だ。こんなの。
こんな感情嫌だ。いらないのに。

気持ち悪い。

気持ち悪いよ。


私はその時初めて跡部さんのことが、男性というものが『気持ち悪い』と軽蔑に近い感情を抱いたのだった。




下種な話。
2016.01.15