知らない世界




違う世界に行くならどこがいい?


そんな言葉が響いて見回すが姿は見えない。真っ白な世界でその声だけがもう一度響く。
その声に私は今愛してやまないBASARAの名を上げた。
すると声はそこでピタリと止まり、代わりに焦げ臭い匂いが鼻をつく。
なんだ?そう思って瞼をこじ開けた。

「なに…これ…」

半身を起こし見渡すと辺り一面焼け野原だった。焦げ臭いのはこれかと理解したがそれと一緒に違う匂いも混じっていることに気がつく。その違和感は歩いていく内にわかった。わかって胃の中のものを吐き出した。

朝焼けの空は全ての景色を照らし出す。
その時初めて太陽が憎いと思った。



そのうちカラスが煩く騒ぎだし、人の声が聞こえる。焼けた家の影から覗き見れば、半端に鎧を纏った男達が何かを探すように見回してる。じっと観察していると鍬や刀を荷台に乗せている。中にはぐったりしてる人の衣服を剥いだりしてる。
その人が死んでると思った途端、吐き気が襲ってきたがなんとか抑えた。

じりじり寄ってくる男達に恐怖を覚えたは隙を見て全速力で走る。しかしすぐに見つかってしまい、慌てて山の中に逃げた。背中の方で男達の声が聞こえる。その声に泣きそうになりながら手足を動かすが妙に流れる視界が遅い。

身体は軽いのに、と視線を下げれば裸足だったことに初めて気づいた。それに見たことのない服を着ていて足も小さい気がする。自分に何が起こっているのかわからないままは走るしかなかった。

闇雲に走って走って走り疲れ、初めて岩場の下や草の中で眠った。疲れきってて痛いとか躊躇とか考える余裕はなかった。あの男達を恐れながら眠り、警戒しながら逃げるように走って、気がつけば誰かの畑にたどり着いた。
青々しく光る葉にはごくりと喉を鳴らす。畑ということは食べ物に違いない。他人の家の畑ということも時期なのかすらも考えられず、一心不乱に山を駆け下りた。


だが、は失念していた。そこに人がいたことを。
1番近い苗に手を伸ばそうしたら罵声が飛んできた。


「テメェ何してやがる!」


ドスのきいた低い声に飛び上がったは慌てて見回すと、すぐそこにこっちに向かってくる男が見え急いで走り出す。けれど食べ物を目の前にしたせいか、驚いて縮こまってしまったせいかうまく力が入らない。

そのせいで数メートルもいかない内に取り押さえられてしまった。




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2011.04.21

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