覚めない夢・1
手元が見えない程度に薄暗い蔵の中では手足を温めるように擦り合わせた。昨日初雪が降った奥州は本格的な冬を迎える。その為に雪かき用の道具を探してきてほしいと頼まれたのだが、この蔵になかった上に出られなくなってしまった。
城から一番遠くてあまり使われてないみたいだったから立て付けが悪くなってたのかもしれない。はぁ、と息を吐き手を暖めようとするがどうにもならないほど寒い。カラスが鳴き、上の方にある小窓を見れば唯一差してた光が薄らいでいた。
「どうしよう。このままだと凍死するかも」
どこか他人事のように呟いたはノロノロと立ち上がり出入り口に向かう。もうそろそろ日が暮れる。他に出口がないかはもう調べた。開けられそうな道具も火をつけるものもない。火をおこそうとして木で手を刺した。
「うおぉーい。誰かいませんかー」
叫んでも声は跳ね返るばかりで外まで届く気配がない。
「困った…」
さっきからお腹がグーグー鳴り響いてる。
「あー鍋食べたい。肉まんもいいなぁ。あったかいミルクティーを飲んでエアコンつけてコタツに入ってテレビ見たい。あ!ミカン食べてないなぁ」
白い筋を取るの大変なんだよねぇ、と笑うと身体がコロンと回って壁にぶつかった。吐き出す息も白く感じる。
「このまま元の世界に帰してよ。そしたら笑って許してあげるから」
仰向けになり暗い天井に呼びかけたが誰も返してはくれなかった。そりゃそうだ。ここには誰もいない。が別世界の人間だということを知ってる人もいない。
「ですよね〜」と溢したはこれ以上体温が逃げないように小さく小さく身体を丸めて目を閉じた。
全部夢ならいいのに。
*
夢を見た。夢だとわかったのは目の前に政宗がいたからだ。どうやら自分は子供ではなく元の姿で政宗と対峙してるらしい。近い距離に胸を高鳴らせば彼の手がの頬に触れ優しく撫でる。その手を取り微笑めば政宗も嬉しそうに笑った。
「ありえない…」
「?」
どんな妄想だ、とつっこみ瞼を開ければいやに暖かいと思った。というより熱い。そして頭もぼーっとしていて思考が回らない。
声がした方を見やれば今にも泣きそうな政宗の顔があった。
「ふふっ変な顔」
「おまっえな…人がどんだけ心配したか」
「夢はもういいのに」
「………?」
「帰りたいよ…」
そこでの意識は遠退き、瞼を閉じた。
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2011.05.01
シリアスで少し続きます。
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