お前は俺のもの
女子供が考えることじゃない、という言葉にあることが脳裏を過ぎる。気づけばそれを口にしていた。
「武田や上杉、そして俺を救ったのはお前じゃないのか?」
「え…?」
「What are you?」 (お前は一体何者なんだ?)
「……!」
一瞬にして強張る顔に俺は苦笑して濡れた頬を指の腹で拭う。喋りたくないのはわかってる。それを隠しておくことでこの奇妙な関係が成立してることも。けれど、聞かずにはいれないのだ。
竹中半兵衛の忍に大半を殺されたが、生き残った黒頭巾組がいうには落ちてきた雷は竜の形をしていたという。
他の奴らは天変地異のように考えてるが俺は違うと思った。小十郎もそうだろう。
雷はが落とした。そう思えてならない。竜の化身か何かか、なんて半ば信じてなかったがこうなると信じたくもなる。何せ、竜はをも救ったのだ。
「私は、救ってなど…」
わからない、と不安げに瞳を揺らすの肩を引き寄せ抱きしめた。
「Sorry.今いったことは忘れてくれ」
「……」
「お前が何者でもかまわねぇよ。ただ、俺の傍にいればいい」
自分が何者なのか。知っても知らなくても今はいい。いつか話す気になった時に最初に俺に話してくれれば。白い包帯に巻かれた頭を撫でてやれば震える手が俺の着物を握り締める。
「政、宗さま…私、私は!」
顔を上げ、必死な表情で訴えるを俺はそのまま布団の上に組み敷いた。傷には支障はないだろうが驚いた目が政宗を映す。
屋根裏に2つの気配を感じたのだ。には聞こえない、微かな音もした。間違いなく部外者だろう。あの猿、証拠にもなくの周りをうろつきやがって。
「ま、政宗さま…?」
「そう焦らなくていい。お前は俺のものなんだ。There is much time.」 (時間は腐るほどある)
「おっ俺のものって…」
涙が引っ込んだ代わりに顔を真っ赤にしたが困惑顔で見上げてくる。俺はそれを眺めながら猿飛に見えないように俺の背で隠した。テメェなんかにこんないい顔見せるかよ。
「…じゃあ、なんで暇なんか出したんですか?」
「Ah?」
「私、もう用済みなんじゃないかって…だから、本当はここに戻ってくるつもりなくて」
でも、慶次さんが一緒に来いっていうから。ぶつぶつと零す本音に俺は心の中で前田に礼をいった。もしかしたら竹中達にもいっておくべきかもしれない。あのまま何事もなくを小十郎の屋敷に置いておけばもしかしたらそのままは戻ってこなかったかもしれない。
「。お前は用済みじゃねぇよ。一時的に帰しただけだ」
「でも帰っても私は」
「I know.あそこにお前の身内はいねぇ。だが守る力くらいはある」
「?…で、でも政宗さまは同盟だって…」
「I'd like to hide you.」 (お前を隠したいんだよ)
「なん…Why am I hidden?」 (何で私を隠すの?)
不安げに見上げるを安心させるように優しく微笑んだ。もし本当に雷を落としたのがの力ならそれこそ他の奴らから隠す必要があるがあの時はそうじゃなかった。
ただ猿飛びやら幸村やら俺が相手できないうちにcontactを取りそうな奴らから遠ざけたかっただけだ。…結果は前田やどうやら一目惚れしたらしい森蘭丸(前田の勝手な妄想だがあながち嘘とも思えない)に会わせたという惨敗ぶりだが。
「俺の目を盗んで覗き見や悪戯されないようにしたかっただけだ」
「………」
「俺がいない時にそんなことをされたら」
フッと揺らいだ気配に俺は内心ほくそえんでとの距離を縮める。そして耳元に近い場所で口を開いた。
「I envy it.」 (妬いちまうだろ)
言葉を理解したは行灯に照らされ少し赤かった頬をもっと赤くしてその光から隠すように顔を逸らした。「子供に、何いってるんですか」と小さくぼやいたが、お前はいうほど子供じゃねぇだろうが。知らないとでも思ってたか?
「こんな言葉で顔を赤くしてるようじゃまだまだガキだな」
「……!」
何いってるんだ。と逆手にとって返してやればムッとした目で睨まれ噴出した。大人の女はそういうのを顔に出さないもんだぜ。笑顔で言葉巧みに言い包めて負かすのが常套手段だからな。
でもまぁ。
「そこがお前のcuteなところだけどな」
笑いを引っ込め、の頬をなぞれば温かい体温が指先から伝わり俺の心臓が高鳴る。平べったい胸や容姿だけ見るととても色気なんて望めないがこの目と雰囲気に惹きつけられる時がある。今がまさにそうだろう。
気がつけばの顎を捉え唇を啄ばんでいた。下唇を吸うと小さな唇から熱っぽい吐息が漏れる。もう1回して欲しい、といってるようにしか見えない唇を俺はもう一度吸った。
「俺にLadyとして見られたかったら、この奥州筆頭伊達政宗をknockoutできるくらいのいい女になれよ。My kitty」
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2011.08.14
英語は残念使用です。ご了承ください。
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