折り紙




心地よい日差しが降り注ぐ中、は縁側で1人折り紙を折っていた。

一昨日、武田と上杉の調査を小十郎と慶次に任せることになりは、政宗と一緒に城に残り手当てを受けた。政宗の命でわざわざ沸かしてもらった風呂に入ったり、初めて見る綺麗な桜色の小袖を着せてもらったり、城付きの薬師に額の傷を見立ててもらった。

まるでお姫様のような待遇にはどうしたらいいのかわからずただ固まっていたのはいうまでもない。
至れり尽くせりなことをしてもらった上に、今日も女中仕事を休めといって折り紙を押し付けられた。

そんな過保護なことをする城主とその右目は大広間でお館様や謙信と会っている頃だろう。同盟を組んだ彼らはこれからのことについて話し合うらしい。

自分には関係ないから仕方ないけど、お舘さまや謙信がこんなに近くにいるのに一目も見れないのはとても悔しい。ほんのちょっとでもいいから、と抜け出そうとしたら天井から真っ黒い忍が出てきて腰を抜かした上にその醜態を黒い忍に晒してしまった。
だってまさか自分に忍をつけてるとは思ってなかったし、黒い忍は…まぁ一見しただけじゃ全部同じに見えちゃうんだろうけど半兵衛の時に見た忍かと思っちゃったし。

その上、トイレに行くにも着いくるので呆れていいのか怒っていいのかわからず、今も一人ぼっちで折り紙を折っている。どうせだからと小さい頃折ったものを思い出しながらあーでもないこーでもないと1人で奮闘していた。


「できた!!」


の周りには飛行機に鶴、手裏剣、アヤメ、兜、風船が色とりどりに散らばっている。そして今自分の手にはやっと出来上がったカエルを持っていた。
アヤメの派生だってのは覚えてたんだけどなかなか出来なくてシワシワになってしまったがちゃんとカエルだ。やれば出来るもんだね。

「緑色だからカエルにピッタリだと思ったんだよね〜」
出来たカエルを床の上に置くとそこに折り紙以外の小さなものに気づき首を傾げた。



「あれ?」
「キキ?」

黒装束の忍さんでも呼んでこの出来栄えを見てもらおうと息を吸い込めば、折り紙より大きい、でもの両手におさまりそうな小猿が折鶴を抱えて私を見上げていた。
小首を傾げる姿がなんとも可愛らしい彼?としばらく見つめあったは試しに人差し指を差し出してみた。そしたら彼?は折鶴を脇に抱え、空いた片方の手で握手をしてくれた。か、可愛いぃ〜!!!

小猿の彼に癒されてると、彼は近くにあったカエルに興味を示し、また小首を傾げた。それから頭のところを軽く叩くと足が少し跳ね、小猿はビックリしたように肩を跳ねさせた。

「これはね。こうするんだよ」

そのまま見ていても癒されると思ったが、ふとあることを思いついたはカエルを彼に向かい合わせ、お尻の部分を床に押し付けた。それから弾くように指を動かすとまるでカエルが跳ねたように飛び上がり、彼に襲い掛かった。
それに驚いた彼は「キーッ!!」と悲鳴に似た声を上げ、折鶴を抱えたまま廊下の奥の方へと逃げていってしまった。


「おっ!何だ、じゃねぇーか!」
「慶次さん!」

小猿が逃げた方から聞き覚えのある声が聞こえ、耳を澄ましていると足音と一緒に派手な衣装の慶次が現れ顔が綻んだ。そんなを見て慶次は一瞬動きを止めたがすぐ人懐こい顔で笑ってこちらに歩み寄ってくる。


「こんなところで何してんだ?」
「見ての通り、折り紙を折ってるのよ」

足元に並べた折り紙と出来上がったものを見せれば慶次は目を丸くしてしゃがみこみ物珍しそうにカエルを摘んだ。そしたら肩に乗ってた小猿が怒ったようにカエルを叩く。

「おい夢吉!何興奮してるんだ?」
「ごめん。さっき私がそのカエルで悪戯しちゃったの」


ごめんね。ともう一度小猿の夢吉に謝ると許す!といわんばかりに「キキ!」と鳴いて私の膝の上まで降りてくる。お詫びにと折り紙の兜を被せてあげればこれまた結構様になってて、夢吉も嬉しそうに背筋を伸ばす。

「おっ似あってんな!夢吉!」
「うんうん。サイズもピッタリだね」
も器用だな。紙でこんなもの作れちまうなんてさ」
「そんなことないよ。簡単なやつしか折れないし」
「そうなのか?だったら俺も作ってみてぇな!」
「いいよ〜」


にんまり笑う慶次にそんなに嬉しいのかと聞いたら「恋文に添えたら喜ばれそうだ」とストレートに返され、は思わず噴出してしまった。本当、慶次は恋が好きだねぇ。
だったら女の子にも喜ばれるものにしようってことで鶴と、アヤメを教えることにした。




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2011.08.14
英語は残念使用です。ご了承ください。

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