約束




曇り空の朝、朝食を食べたはある人を待っていたが一向に来る気配がなかった。最初、忙しいせいかな、て思ったけどどんなに忙しくても顔を見に来てくれるからそれはないだろう。

「小十郎さま遅いなぁ」

待っているうちに何か大変なことが起きたんじゃないかと心配になってきたは、自分から会いに行こうと立ち上がった。顔を見に行くくらいなら政宗にも内緒にしてくれるだろう。


「……」
「……」
襖を開けると壁のように立ちはだかる黒装束の忍、長門にの肩が大きく揺れる。いつ見ても慣れないなぁ。

「あの、小十郎さまに会いたいんです!」
「……」

ああっ首振られた!

「何かあったんじゃないんですか?」
「………」


事件は起こっていないらしい。ぶんぶん首を横に振る様は可愛いんだけどな。大きく深呼吸をして緊張を解すとは腕を組んだ。
何かあったわけじゃないけど忙しいのか。うーん。それなりに一緒にいるけど今迄こんなことなかったな。…あ、政宗が脱走した時はこんな感じだった気がする。

じゃあ部屋で大人しくしてないと逆に怒られるかな、と唸ったところで長門が警戒するように私を背に隠しクナイを構えた。

「専属忍なら質問くらい言葉で返してやりなよ。ちゃん困ってるだろ」
「佐助さん!」

聞こえる声に長門の着物を引っ張って大丈夫だと訴えたが彼は攻撃体制を解く気はないらしい。
慶次や佐助、それから幸村と会ったと小十郎と政宗に報告した時に長門も散々怒られたらしい。も説教の合間に愚痴られた。そのせいで長門は必死に任務を全うしてるんだろう。

小十郎が何の為の奥の間だ!て嘆いてたけど、こっちだって呼んだ訳じゃないのよ?今だって呼んでないのに佐助来たし。

「どうかしたの?」
「うちの旦那がちゃんに会いたいっつってきかなくてね。迎えに来たってわけ」
「………」
「…あーやめてくんない?俺様体力使いたくないんだよ。こっから先の道中も長いんだからさ」
「どこかに行くの?」
「あれ?聞いてない?俺様逹甲斐に帰るんだよ」
「ええっ!」


嘘っ聞いてない!佐助の衝撃的事実に声を張り上げると長門の着物を強めに引っ張った。

「長門さん!私見送りに行きたい!行かせてください!」
「……」
「渋ってもあんたんとこの上司も承諾してるの。だからそこどいてくれる?」


さ、行こうかちゃん。と長門を押しのけるように入ってきた佐助はを抱え上げると瞬く間に外に出てしまった。一瞬何があったのかわからなかったは何度か瞬きをしてると門近くの人だかりの中に舞い降りた。ま、まるでジェットコースターだ…。
そこには真っ赤な山が立ちはだかっていて思わず肩が揺れる。

「あ…」
「おおっ殿!!」

真っ赤な山と目が合い、またビクッと肩を揺らすと大きな声が響き渡る。石畳の上に佐助に下ろしてもらうと走るように駆けて来るワンコ…もとい幸村が満面の笑みでに挨拶した。

「よかったでござる!このままお会いできないままかと思っておりもうした」
「あの、甲斐に戻っちゃうんですか?」
「左様。織田、豊臣の動きが気になる故、甲斐にてその対策を練らなければなりませぬ」
「そうですか…」
ちゃん今日俺様達が帰るって知らされてなかったんだってさ」
「なんと!それは失礼もうした!」
「わっ」


まだちゃんと話すらできてないのにもう帰っちゃうのか。と落胆していると幸村に抱きかかえられ足が宙に浮いた。近くなった距離に何度も目を瞬かせてると彼は元気付けるようにに微笑みかける。

「そのように落ち込まなくともまた会えるでござる!」
「幸村さま…」
「今は無理かも知れぬがまた奥州に来ることもできよう。その時はまた団子を共に食しましょうぞ」
「旦那!また隠れて団子食べてたの?!」

元気付けるつもりが佐助にばれてしまい、しまった、という顔になった幸村には笑った。

「はい。その時は是非!」




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2011.08.31

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