1人じゃないよ
「んで、なんでここで団子なんか食ってんだ?」
「え、そ、それはその…」
うん。聞かれるとは思ってたよ。予想の範疇内だけどどう答えようか。素直にいってもいいんだけどわかってもらえるのかな。
この感覚も異世界の人間ならではの感覚だったらどうしようと思って口を噤んでいると汗を拭き終わったらしい政宗が「迷子か?」としたり顔でこっちを見てきた。
「違います。前に迷子になって…そこ、笑わないでください!それでここを見つけたんです」
やっぱりな!と笑う政宗に口を尖らせたは真っ直ぐ城の方を指差した。政宗は笑いながらも城を見たがさっぱりわからない顔でこっちを見てくる。やっぱりいわなきゃよかった。
「ここから見える青葉城が空の色に映えて綺麗だったんです。角度とか陰影具合とか色々ありますけど、次にお使い頼まれたら絶対ここにこようって思ってたんです」
「あそこに住んでるのにか?」
「それとこれとは別です!」
やっぱりわかってくれない。とそっぽを向くと政宗は笑って「jokeだ」と腕を引っ張る。振り払えないそれを恨みがましく見るとそのまま引っ張られ膝の上に座らされた。
ムッとした感情とは裏腹に、ダイレクトに聞こえる政宗の息遣いに危うく膝から落ちそうになる。
「Are you all right?」
「は、はい」
腰に巻きついた腕に肩が揺れた。密着したせいで余計に感じる背中の体温とか耳にかかる息とか声にぞわりと背中が粟立つ。脳裏には部屋でのことが過ぎって頭が熱くなった。行灯に照らされた天井にいつも以上に艶かしい政宗がじっと私を見下ろしていて…それから近づいてきて。
「?」
「はっはひ!」
どうした?と覗き込む政宗には必死になって首を横に振った。しまった。何を思い出しているんだ。折角忘れてたのに余計緊張するじゃないか。
「ククク…俺は城を見る時は全部ひっくるめて見れるようにmountainに登るんだ。そこから一望できる景色は凄いぜ。ここが俺の国だって自覚できる場所でもあるしな。だが、ここも悪くねぇ」
「……そうですか?」
「民から見る青葉城もなかなか乙なもんだな」
そういって城を見上げる政宗には息を飲んだ。綺麗だった。目を細め真っ直ぐ見据える整った顔にドキリとしないわけがない。
でもそれ以上に怖くもなった。これだけ近いのに、こんなに密接してるのに遠く感じられて。ここから見る城のように遠い気がして胸が苦しくなった。
「そ、そうだ。私団子屋のおばちゃんから政宗さまにって団子をおまけしてもらったんですよ」
不安をかき消すように団子を広げると政宗は城に向けていた視線を団子に変える。それに少しだけホッとして膝の上にある串を政宗にも渡した。
「うめぇな」
「そうですね」
「、」
団子を頬張る音すら近くに聞こえて緊張するのを顔に出さないようにしていれば、それを突き破るような声が鼓膜に響いた。
「、城を眺めるのも勝手だが、お前がいるべき場所はあの城の中であってここ(外)じゃねぇぞ」
「……」
「ここで城を見る時は俺を誘えよ。You see?」
何もかも見透かすような言葉と一緒に政宗はの耳朶にキスを落とす。その核心とリップ音に顔が熱くて苦しくては俯いた。
遠いと思ってた距離が一気にゼロになったような気分だ。身分も年齢も身長も何もかも遠いのに、わかってるのにそんなの関係ないと全部吹き飛ばされた。うわぁ。私の方が子供だ。
それがまざまざと突きつけられた気がして恥ずかしかったのだけどそれに浸ることすら許す気がないのか「?」と頭の芯を蕩けさせるような甘い響きと暖かくて大きな手に嫌でも現実に戻ってきてしまう。
すぐ横を見れば答えを待ちわびるイケメン筆頭が頬をくすぐるように撫でるのでは思わず噴出してしまう。政宗って時々可愛いよね。
「I see.」
こんな子供の私にお伺いを立てるなんてさ。そう思ったけどやっぱり嬉しくて、勢いに任せて政宗の頬にキスを落としたら、驚いた彼が珍しく照れくさそうに笑ったのでも嬉しくて微笑んだ。
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2011.09.23
英語は残念使用です。ご了承ください。
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