事件勃発
日も高く上ると、城の者総出で政宗率いる伊達軍を見送った。今、門の前に立っているのはと慶次だけで他の人達は仕事に戻っている。政宗がいない間も城を守り機能し続けるためだ。米粒まで小さくなった後ろ姿には無意識に息を吐いた。
「心配かい?」
「そうですね。少し」
「少し?」
「伊達軍は強いですから」
自信満々にいい放つに、慶次は最初驚いた顔をしたが納得がいったのか大いに笑った。
「そういえば、お守りがわりに首飾りを独眼竜にやったんだって?」
いいだろう!って見せびらかされたぜ。と茶化す慶次には顔が熱くなった。戦へ一緒に行けないからと預けていた竜のシルバーネックレスをつけてあげたんだけど、まさか自慢してるとは。お守り、というほどご利益があるものじゃないんだけどなぁ。
「よっぽどのことが気に入ってんだな」と頭を撫でられ返す言葉が見つからなかった。
戦闘服姿が格好いいって言わなくてよかったかも。この分だとそれすら慶次に自慢していそうだ。
「それはそうと、仕事に戻んなくていいのか?」
「お使いを頼まれてるの」
周りを見渡し誰もいないことを確認して覗き込んできた慶次に、はもう見えなくなった伊達軍から目を放し向き合った。事前に佐和から託を言い付かっていたのだ。
「だから先に用事を済ませないと」と、いえば行き先が城下町とあって慶次もついて来てくれることになった。
*
小猿の夢吉と戯れながら言い付かった用事を済ませ、帰りは見晴らしのいい川沿いを歩く。この辺は菜の花が咲いていてとても綺麗なのだ。
「へぇ。こんなとこもあったんだな」
「うん。私も最近見つけたんだけど綺麗でしょ?」
「ああ。晴れてれば山まで綺麗に見えるんだろうな」
土手を歩きながら残念そうに慶次が呟く。空を見上げると太陽が雲に隠され薄暗く山もすっぽり隠されていた。雨が降る感じはなさそうだが風が少し強くなってきた。
「慶次さん、どうかした?」
「!いいや」
一瞬、慶次の顔から笑顔がなくなったので首を傾げるとやんわり誤魔化された。
お腹でも減ったのか?と聞けば「幸村じゃあるまいし」と逸らされる。それじゃ幸村は食いしん坊キャラじゃないか。そんな話をしていたら聞くタイミングを逃してしまった。
それから、雨も降ることなく散歩するように帰っていたのだけど、城と街を繋ぐ人気のない林道で慶次がいきなり立ち止まった。
「チッやべぇな」
「何が?……っ!」
警戒する慶次に声をかけると、それはすぐに起こった。達を囲むように真っ黒い装束の忍が数人、降り立ったのだ。
掲げられたクナイが鈍く光る。あてられる殺気とその姿にの肩が揺れた。
「水入らずで楽しんでるところに現れるとは随分と無粋な奴等だな」
「…大人しくその娘を差し出してもらおうか」
「!」
クナイを構え威嚇してくる忍の言葉には目を見開いた。自分が狙われている?
「はいそうですかって渡すと思ってんのか?」
「ならば、貴様も殺すまで」
自分の方にを引き寄せ、慶次は背負っていた超刀を掲げた。その威圧感だけでも十分なのに、いつもは見せない真剣な表情で忍を睨み付ける。
「。俺から離れるんじゃねぇぞ」
チラリと視線をくれてきた慶次に頷き毛皮をぎゅっと握りしめる。それを見届けた慶次は超刀を大きく振り上げた。
「さぁ、どこからでもかかってきな!」
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2011.09.27
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