素直な下心・2




「あああの、触っても楽しくない、ですよ…?」
「A-ha?そうか?」

鼻で笑った政宗はそのまま手を無遠慮に動かし撫で回す。こんな子供の身体に触ったところで楽しくもないだろうに政宗は悪戯っぽく笑うと、ある部分を引っ掻くように爪を立て押し潰した。
与えられる感覚にビクンと反応し逃げ腰になれば、また政宗に引っ張られ今度は唇も奪われる。触れる柔らかい唇とフワフワとくすぐるような髪、それから見える長い睫毛に自分が何をされてるのかと思ったら耐えられなくなってぎゅっと目を瞑った。


「…っ…っ…!」

ほんのり記憶に残ってる前までのキスが子供騙しに思えるかのような濃厚なものに頭がくらくらする。こんなの、元の世界でも知らない。
背中が粟立ち震えるような感覚も込み上げる感情も全てが色濃くて、チカチカして、それからどうしようもないほど泣きたくて。政宗の羽織を握り締めればより一層深く舌を絡められ、口の端から飲み込めなかったものが伝い落ちた。


「はっ…はぁ…はぁ」
「随分といい顔をするじゃねぇか。なぁ

やっと口を解放してもらったは浅く呼吸を繰り返しコクリと喉を鳴らす。飲み込んだものが自分のものだけじゃないと思うと余計に顔が熱くなる。
ど、どうしよう。政宗に触れて嬉しいんだけどこの状況はちょっとやばい。撫でられた頬に肩を揺らせば政宗はクッと笑って頬にキスを落とした。ううっ政宗がめちゃくちゃ色っぽい。心臓がはちきれそうだ。


、もう一度聞くぜ。テメェは奥州と甲斐、どっちに帰りてぇんだ?」
「…政宗さまの、ところに」


スッと笑みを消した政宗が真剣な眼差しで見てくるのでも決めていた言葉を述べた。これは最初から決めていた答えだ。色々と馴染めないことがあるけど、怖くて直視したくないところもあるけど。
心の中でまだもやもやして持て余してる部分に眉を寄せると覆いかぶさってる政宗が肩を揺らして笑ってるのが見えた。何故?

「奥州じゃなくて、俺なのかよ…」
「え?…あ、」

そういえば質問は国単位でしたね。なんだか恥ずかしくなって赤くなった頬のまま「すみません、奥州で」と返せば政宗はの肩に額を押し付けて笑いを噛み殺した。この人変なものでも食べたんだろうか。そこまで笑わなくなっていいじゃない。
首や頬をくすぐる髪に怒っていいのか笑っていいのかわからなくてとりあえず眉を八の字にすると、やっと笑いが収まったらしい政宗は涙目でを覗き込んだ。


「お前の気持ちは、よーくわかったぜ」


いい答えだ。そういってニヤリと笑った顔に反射的に目を閉じれば唇に柔らかいものが落ちた。今度は以前にされてたような優しいキスだ。食むように唇を啄ばまれ、その刺激にたまらなくなって彼の上唇にちゅっと吸い付けば途端に政宗が離れた。
急に消えた感触に物足りなくて思わず「あ、」と声を漏らしてしまう。


「……」
「……政宗さま?」
「帰るのは止めだ」

目を開けるとまっすぐ見下ろす政宗と目が合いどきりとする。向けられる視線にドキドキして掴んでいた羽織をぎゅっと握り締めれば、彼は無表情に籠手を外しだした。

「やめるって、でも、みんな準備終わってる頃じゃ…っ」
「狼共の中に置いていくんだ。"しるし"くらい残さねぇと割にあわねぇ」
「…あっ!ま、待って政宗さまっ…っ」
「I can't wait.いい機会だ。予告どおり手取り足取り教えてやるから覚悟しろよ?My honey」 (待てるかよ)


いつの間にか帯が緩められ、肩をなぞるように着物の中に入ってきた手は温かかったけど妙にいやらしくて身体が跳ねる。待って!と彼の腕を掴めばその手を取られ手首にキスをされた。手首には丁度彼から貰った髪紐があって、政宗がニヤリと笑う。

『手解きもその後も全部俺が教えてやる。だからそれまで誰にも絆されんじゃねぇぞ』

頭の中で忘れかけてた言葉が蘇ったは、身体中が沸騰したようにぶわっと熱くなった。




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2011.11.15
注意書きを入れようかちょっと迷った話。

英語は残念使用です。ご了承ください。

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