恋のお悩み相談室・2
「…慶次さんから見たらそう、見えるの?」
「おお?…なんだ、怒られるのかと思った」
あまりにも必死に睨みつけるから身構えていたらしい。こんな子供相手に緊張するなんて風来坊も大したことないね。と鼻で笑ったら目が義姉のまつが怒った時と同じだったといわれた。ちょっと複雑だ。どんだけ怒られてるんだ慶次よ。
「俺からすると幸村はまだまだ妹みたいに思ってるところあるけど、佐助は結構本気だと思う」
「冗談とかじゃなくて?」
「俺とか誰かがいたらそうかもしれないけど、その時と2人きりの時の佐助違うだろ?」
「え……………。……うん、多分」
「なんだよ。曖昧だな」
「だって、私にはどこまでが本当だかわかんなくて」
そうだ。それでさっき悩んでたんだ。垣間見える嘘じゃないと思える言葉にどう反応したらいいのかわからなくて。
「と話す時は殆どが真実だと思うぜ。ホラ、好きな子ほど苛めたいっていうだろ?」
「………」
「そんな嫌な顔するなよ。佐助が見たら傷つくぜ?」
「いいよ。それ絶対わかっててやってるはずだから」
つん、と不機嫌に顔を逸らせば「そりゃそうか、」と慶次が笑った。
「そうかー…。慶次さんがそう見えるんだったらそうなのかも」
「モテる女は辛いな、」
「他人事だと思って…何でこうなったか私自身わかってないのに」
「そこがのいいところ、なんじゃねぇの?」
「…それ、褒めてないよね?むしろ貶してるよね?」
「貶してないって。俺だってのこと好きだぜ?」
「そこでいう言葉?受け止めづらいんだけど」
「迫らないだけマシだろ?」
「そんなことしたら大声で小十郎さま呼ぶもん」
「うわーそりゃ勘弁だわ」
顔を引き攣らす慶次をいい気味だと思って鼻を鳴らしたは、首までお湯に使った。
昼間とはいえ今日は気温が低い方なのかもくもくと上がる蒸気は多い。そのお陰での身体も慶次の身体もそれほど見えず思ったよりは緊張せずに済んでる。
まったく、私が子供の身体だからいいものの、これが実際の年齢の身体だったら慶次はどうするつもりだったのやら。ああでも、大人の女性でも慶次は気軽なのかもしれない。
ねねのこと好きなのは知ってるけど慶次の恋愛遍歴は知らないから、本気の恋ができないと思い込んでる彼には好意があってもこの程度は大したことはないのかも。
「慶次さんに話せて良かったかも。昨日からずっと考えてたんだよね」
「あー昨日の晩のアレか。アレ見た時さすがに俺もマズったかなぁって思った。佐助スゲー殺気で睨んできたし」
「気配とか読めるんじゃなかったの?」
「うーん。寝起きだったし、まさかと佐助があんなことしてるとは思ってなかったし」
「それ語弊があると思うんだけど。意味深な言葉でいうの止めてください。何もなかったんだから」
「未遂ってやつだろ?けど、あの距離と雰囲気はさ、俺が来なかったら…」
チラリと見てきた慶次にの顔がボッと熱くなった。また佐助の言葉と触れられた感触を思い出したからだ。いやいやいや、今ここで思い出すのは良くない。まるで佐助に気があるみたいじゃないか。
この恋愛未熟女め!と自分自身を罵っているとぱしゃりとお湯が揺れた。
「それにしても何かこういうの懐かしいな。昔京都でさ、女友達の恋の相談受けてたんだけど、その人見た目ぽっちゃりで年も若く見られるような人でさ。
産毛がそう見える原因なんだと思うけど…実は人妻だった時期もあったんだぜ?あんな可愛らしい後家さんとか、男の視線釘付けだって」
「…へぇ」
「でも相談を聞いてたら、その人のことを好きな男に勘違いされて危うく殺されかけてさ!いやあ、あん時は肝が冷えたぜ」
「…慶次さんはその人のこと好きになったりしなかったの?」
「うん?まぁそれ以前に友達だし、その人旦那のこと死んでからもずっと好きなんだって知ってたからさ」
「そっか…えらいね、慶次さん」
「…。俺そんなに女の人に誰彼構わず手を出す奴に見える?」
「うーん。日頃見てる慶次さんだとなー…あはは、うそうそ。それだけ大事にしてるってことでしょう?」
ただ、本気の恋愛は奥手そうって思ったけどそれは黙っておいた。男も女も隔てなく友達として大切に出来るのは慶次の美徳だ。
目を丸くしてこっちを見る彼ににっこり微笑めば、何でか顔を逸らし頭を乱暴に掻いた。よく見ればお湯に浸かりすぎてる為か肌が赤くなってる。
「慶次さんもうあがったら?のぼせるよ?」
「あ、ああ。そうだな」
そうするわ、そういっての肩に乗ってお湯に浸かっていた夢吉を受け取り自分の肩に乗せた慶次は前を横切ろうとして止まった。
「。何かあれば今みたいに聞くから。だから、俺のこと頼れよ」
「うん。ありがとう」
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2013.11.01
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