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と出会ったのは小学生の頃だった。確かクロと仲良くなる前はとよく遊んでいたと思う。
別には女子の友達がいないってわけじゃない。その頃は同じクラスで席も近くて家もそれなりに近かったから自然とよく遊ぶことが多かった。
人付き合いが苦手な俺を気にしてたのもあっただろうし、今よりもひ弱だったから時々姉のように振舞ってくれていたのを今でも覚えてる。
でもそれはクロが来たことで一変した。
俺は特に気にしてなかったけどはクロと遊ぶ俺を気にいらなかったみたいで、先に遊ぶ約束をしたのがクロだとわかるととても不機嫌になった。
それが少し疎ましく怖かったけど直接文句はいわなかったし、クロと遊ぶ方が新しい発見もあって楽しいと思うことが多かったから俺は見ないフリをした。
そしたらある日突然がキレた。
今思えばバレーを始めてよく熱を出していたからそれを心配してくれてたんだと思う。
でもその時の俺はヒステリックに怒るが怖くて嫌で「じゃあもうとは遊ばない」とつっぱねた。
その時のの顔は今でも覚えてるけど思い出すと胸がとても苦しくなってバツが悪くて泣きたくなるから正直思い出したくない。
その事件を切欠に俺達は交流をぱったりとやめたんだけど…正確にはがあからさまに距離をとるようになって無視されてこれもういじめじゃないか?と思うくらい嫌な気持ちになったんだけど…中学の時にまた話しかけられた。
その時のは不審者のように挙動不審で落ち着かなくて、目も合わせられなくてまるで鏡を見てる気分だった。
「あー…えと、試合観たよ。おめでと」
少しバツが悪いような、でも勇気を振り絞ったぎこちない笑みは研磨が知っているとは程遠かったけどとても印象的で可愛かった。
そこで初めてを異性として認識できた気がする。
「あ、孤爪だ」
移動教室から戻る途中、友達と話していると廊下ですれ違った。久しぶりに話した時のようなぎこちなさはなく、自然な笑みで話しかけられた。
「昨日はお疲れ〜ベスト8おめでとー」
高校に入って改めてアドレス交換をして、昨日メールをくれていたのにわざわざ言葉にしてくるに少し不思議な気持ちになったが頷いて返した。
ろくに言葉を返さなかったがは気にすることなくそのまま友達と一緒に研磨とは反対方向へと歩いていく。
あの時も試合を観に来ていたことに驚いて、まさか声をかけられると思っていなくてただただ目を見開くだけしかできなかったけど、今回も対応がそぞろになってしまった。
はいつもいきなり話しかけてくるから落ち着いて返せないし、いつもいうだけいってさっさと行ってしまう。
だから好意的な言葉を返そうとしても間に合わない。引き止めるにはあと1歩が踏み出せない。
「つかず、離れず…」
立ち止まり振り返ると友達と楽しそうに話すがいる。
もうあの頃みたいに『研磨くん』と呼ばれないし遊ぶこともない。忘れ物を貸し借りする仲でもない。
「ハァ…」
何が切欠で俺と再び交流しようと思ったのかわからないけど、の態度は慎ましく健気だ。以前のような関係とは少し違うし距離感も大分遠い。
この微妙な距離感にもう少し近くてもいいのにと思うのだけど、脳裏に過る顔を思い出すとやっぱりこれ以上の修復は無理な気がして研磨は人知れず溜息を吐いた。