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放課後が文化祭準備に宛がわれ、練習も一旦休みになったバレー部はボールをお米に変えおにぎりを作っていた。

「おい山本!強く握り過ぎだ!」
「えっそうなんスか?!」

調理室を借りた研磨達は当日に出すばくだんおにぎりを試食するべくあーだこーだとおにぎりを作っているのだが今は中身の具よりもおにぎりの握り方で争っている。
食べるのは自分じゃないんだから適当でいいんじゃないか?と思いながら1番最初に離脱した研磨は端の方で1人ゲームをしていた。


「はいはーい。皆さーん!助っ人を連れてきましたよ〜」
「ドウモー助っ人デース…」
「ヒッ!」
「おい黒尾〜後輩拉致ってくんなよ!目が死んでるぞ」
「声も限りなく棒読みだしな」

そんなところへガラリと扉を開けてクロが入ってきたのだけど、一緒に入ってきたを見て思わず注視してしまった。

最近何かとクロに振り回されてるは心ここにあらずな顔で「有無を言わさず拉致られた助っ人でーす」と抑揚のない声で本音を吐いていた。

「何をいう夜っ久ん!ばくだんおにぎりを勧めたのはちゃんなんだから、責任を持って面倒みてもらわないといかんでしょう!」
「…たかがおにぎりに教えることなんてないと思うんですけど」
「いや、そうでもないんだよ。山本の奴ぎっちぎちにおにぎり握りしめるから米が硬くなってさ。石食ってるような気分になんの」
「石って…」
「だ!だってしょうがねーだろ!弱く握ったら食べる時崩れちまうんだから!!」
「極端か」


夜久くんの言葉で虎に視線をずらすとに見られた彼はビクッと福永の後ろに隠れて言い訳をした。
その前に虎はハンドボール並に大きなおにぎりをなんとかした方がいいと思うんだけど…あれいくらで売るの?ていうか売れないでしょ。

「結局具は何になったんですか?」
「あー具はこんな感じかな」
ちゃーん。値段と希望売り上げはこんくらいなんだけど、どう思う?」
「いっぺんに来られても困るんで…く、クロ先輩はそこでステイしててください」
「…はい」

具の中身を海くんから聞いてる後ろからクロがやってきて値札を見せてきたのでこれでもかとの顔が歪んだ。

そしてクロの名前を呼ぶのに一瞬躊躇したような、苦虫を潰すような顔で離れろ、と床を指さしたのでクロは渋々後ろに下がった。とても変な光景だ。


「目の前で握るとかじゃなくて出来合いを売る感じでいいんですよね?だったらきっちり量っておにぎりにした方がいいかな」
「米も量るか?」
「そうですね。どうせやるなら全部売りきって利益出したいですし…値段は繰り上げてキリのいい金額にしましょう」
「え、いいのか?」
「少し高く感じるかもしれませんがメインの具が豪華だし、大きさが目を惹くのでいけると思いますよ。あとは宣伝と看板派手にすれば…と、コスプレなんでしたっけ」

飾り付けしなくても十分派手か。と納得するに夜久くん達3年生が「おー」と感心した声で拍手をするので、彼女は困った顔で照れた。そんな顔初めて見たかもしれない。


「あ、あと!おにぎりですけど!」

照れ隠しで話を切り替えたはご飯や具を秤の上に乗せては濡らしたどんぶりの中へと投入した。
最後にまたご飯を乗せると同じように濡らしたどんぶりで蓋を閉じ上下を持って少し大きめに振りだした。

「ふぬ!……ちょっと重っ!……ん〜っ」
「「「………」」」

調理室にあったどんぶりが陶器のせいか、の手に余るくらい大きいせいか、とてもやり辛そうに振っていて研磨も思わずじっと見つめてしまった。

男子達が落として割らないか戦々恐々とした気持ちで見守っているとやっとテーブルに置いた。は上になっているどんぶりを外すと「よし!」と小さくガッツポーズをとった。


「普通の大きさならお椀とかでやるんでちょっと自信なかったんですけど、これなら固め過ぎずにおにぎりができるんじゃないかと」
「おおー丸くなってる」
「具もはみ出してないな」

なんかスゲー!と感心する夜久くん達になんとなくホッと息を吐いてゲーム画面に視線を落とした。が、落ち着くどころか更に騒がしくなり今度は何、と眉をひそめ見やった。

「おいちょっと待てリエーフ!何でテメーが食べるんだよ!」
「え?だって俺お腹減ってきたし。試食ですよ試食」
「試食しなくても美味しいに決まってんだろ!見本がなくなるだろ見本が!!」
「あー!!」

海苔を巻いたおにぎりを横からリエーフがひょいっと掴み取り勝手に食べようとしたので虎達が文句を言いだした。


後で聞けば怖くても女子が作ったものには敬意を払えとか勿体ないとかそういうことらしい。
その気持ちが外に漏れてるくらいには虎は焦っていて、見本が欲しい他の人達が文句を連ねた。

しかしリエーフが聞き入れる訳もなく、あっさりおにぎりを頬張ったのでみんなは悲鳴に近い雄叫びを上げていた。
おにぎりひとつでみんな煩いんだけど。もう一個作ってもらえばいいじゃん。

「ん!普通のおにぎり…あだっ」
「ったり前だろうが!!」
「悪ぃ。もう1個作ってくんね?」
「…わ、わかりました」

腕が辛い…と顔に書いてあったがは同じ作業を繰り返し、2個目のばくだんおにぎりを作ったが「う、腕が死んだ…」と辛そうな顔でしかめていた。

もクロの誘いなんか断ればいいのに。
付き合い良過ぎでしょ…そんなことをぼんやり思ったが、思った後でなんとなく胸の辺りがモヤっとして研磨も似たように顔をしかめたのだった。