You know what?




□ 「もしもドキサバになったら」2 □




「そんなことより!無人島生活でどのくらい生きれると思う?」
「「えー」」
「えーじゃない!!」
つまんないって顔すんな!!つーか、アンタ達が口尖らせても可愛くないから!!


「1週間待っても救助が来ない、また遅れてるという条件か?」
「そうそう」
「誰が最初に脱落するかってことだろぃ?」
「…思ったんスけど柳生先輩って結構早めに死にそうですよね」
「……切原くん?」
「あ!いえ!!じょ、冗談です!冗談ですってば!!目からビーム出さないでください!!」
「…出しませんよ。というか仁王くんも私の顔で変なポーズをとるのはやめてください。ビームなんて出ませんから」
「プリ。やってみんとわからんじゃろ?」
「いや、わかるでしょ」

「私赤也くんのいうことわかるかも。柳生くんって綺麗好きだからあんまり長い無人島生活だと疲れて弱っていきそうだよね」
「皆瀬先輩…!!」
「皆瀬さん……」


両極端の表情に挟まれた皆瀬さんにはスゲーなと眺めてしまった。あそこまでばっさりいう皆瀬さんは初めてだ。今にも泣きそうになってる柳生くんも。

「それをいうなら真田もすぐ死にそうだよね」
「ゆゆゆゆ幸村?!」
「どっかに足滑らせて運悪く頭に石ぶつけてご臨終って感じがする」
「「「「ぶっ!」」」」

それは酷い。後でちゃんと埋葬してあげるからね、といってやれば半泣きの弦一郎が「俺は死なん!」と叫んでいた。可哀想に。



「他はっつーと。ジャッカルはむしろ野生化しそうだよな。将来は原住民?みたいな」
「俺は帰るぞ。家あるんだし」
「島に自分の家作っちゃえばいいじゃないっスか。そんで猿の嫁さん貰うとか」
「俺は人間だ!!」
「赤也だって生き残らなそうじゃない?」
「…どういうことっスか」
「何かアンタも足滑らせて石に頭ぶつけそうな気がする」
「俺はそこまでドジ踏まねーっスよ!」
「いやいや。赤也の場合はなんとか生き残るんじゃが捜索隊が来ても、洞窟かどっかに隠れておって見つけてもらえない→ジャッカルと同じ原住民パターンじゃ」
「俺は人間と結婚しますよ!!」
「俺だって人間と結婚するわ!!」

なんつーこといってくるんスか!と騒ぐ赤也に仁王はくつくつ笑ってこちらを見たが「俺はどうしようかな〜」という幸村の言葉になにそれ、とつっこむように見てしまった。隣にいた仁王がムッとした顔になったがそれを見たのは幸村だけでクスリと笑ってに視線を向けた。


「多分俺のキャラだと病気にかかって死んじゃうと思うんだよね」
「…自分で言うかな」
「だって気落ちして自殺とか足滑らせて死ぬとか想像できないだろ?」
「……確かに」
「かといって生き残る程強くもないし」
「……そ、そんなことないよ!幸村だって今はもう健康体なんだし!!」

あまりにも恐ろしいことをいう幸村に悩みでもあるのか?と不安げに訴えれば幸村はフッと笑って机の上にあったの手の上に彼の手を乗せた。


「だからせめて誰かに看取られながら死にたいんだけど、その時はお願いしてもいい?」
「(やたらリアルっぽくて怖いんだけど)う、うん。わかった。そんなことにならないようにしたいけどなったら最後まで面倒みるから」
「ありがと」
「……を残して先に死ぬとか情けないの」
「大丈夫。俺よりも先に仁王は死ぬから」
「……」

何その断定。仁王が黙っちゃったじゃないか。若干傷ついてる仁王が不憫で幸村に掴まれてない方の手で彼の頭を撫でてやると「何(うらやましーこと)やってんスか!」と赤也が騒いだ。



「って、今生きてんのはブン太とと皆瀬に柳か?」
「俺も生きてるっスよ!」
「ジャッカルも生きてるよね」
「あーうん、まぁな」

野生化してっけどな。と肩を落とすジャッカルに苦笑すれば丸井が「柳はともかく皆瀬は微妙だよな」とニヤリと笑った。

「後追い自殺とやめろよぃ」
「しないよ!私はおばあちゃんまで長生きするんだから!」
「それはいい心掛けだな!な、柳!!」
「ん?あ、ああ。そうだな」

赤い顔で豪語する皆瀬さんに話を振られた柳は何故そこで俺に振る?と困惑顔になったが律儀に頷いていた。隣に座ってる幸村がニヤニヤと見ていたが柳は困った顔で笑うだけで何もいわなかった。


「さっきから全然私出てないけど、生き残り組でいいの?」
「そりゃそーだろぃ。俺が生きてるんだし」
「…意味はわかんねーけど、食に貪欲なお前が生き残るのは納得だわ」

何も食べるものなくなっても何かしら見つけてきて食いそうだもんな。とジャッカルがぼやいても同意した。お菓子だけど料理ができるし。その丸井が生き残るのは納得できるけどでもそれで何で私まで生き残ってるわけ?

「だって、女子を餓死させるわけねーだろぃ?」
「おお、」
「まあ本気で食いもん何もなくなったらどうすっかわかんねーけど」
「カニバかよ!!」


こえーな!ドン引きした顔で丸井を見れば「だっての脂肪のつきっぷりとか皆瀬よりうまそうだし」とのたまった。今、私と丸井の心の距離は10000kmを超えました。

「…何か話殺伐としてきたんでもう少し軽い話しません?(つか、先輩達いつまで先輩の手触ってるんだよ!)」
「じゃあ楽しかった思い出でも語るか?」
「想像だけで語るの?語れるの?」
「"うまかった。むしゃむしゃ"」
「こえーよ!!しかもなんでカタコト?!」



やめてください!と訴えれば丸井はケラケラ笑って「"無人島生活で俺の身体はスリムに引き締まったぜ、マル"」と冗談なんだか本気なんだかわからないことをのたまった。

「じゃあ俺っスね。"初めて木の上で生活したけど超楽しかった!マル"」
「何か感想文みたいだな……いや、ちげーって!原住民じゃねーよ!…あー…"家建てるとか初めてづくしで失敗も多かったけど、見たことない魚とか食ったり俺でも役にたつことがあってよかったぜ、マル"」
「やっぱ原住民化してんじゃん」
「してねーよ!!お前らもその魚食ってんだよ!」
「新鮮な魚は美味しいでしょうね。…では。"皆さんと共に帰るつもりですが、1番楽しかったのは早朝の散歩でしょうか。共同生活もいろいろ発見ができて良い経験が出来ました"」
「柳生くん。それ遺言みたい…っえっと私は"みんなで囲んで食事をするのはとっても楽しかったな。家に帰ったらまたみんなで食べたいね、マル"」
「おおっさすが」

「ムム、俺の番か。"非常事態にもめげず、いち個人個人が協力して事を成すのは容易ではなかったが王者立海として恥じない生活態度だったと思う。この生活を糧に自分の力を更に高めていきたい"」
「硬っ!」
「何でそこで王者立海なんだよぃ」
「さすがとしかいいようがありませんね」
「"…それから、俺は転んだくらいでは死なない"」
「フフっ真田気にしてたんだ」
「……」


「俺か。"ありきたりだが都会では感じれないことがたくさんあった無人島生活だった。五感全てを満たす生活など一生に1度あるかないかだろう。知りえなかったデータも取れて俺はとても満足している。中でも1番の収穫は赤也が早起きを覚えたことだ。これで来年の立海テニス部は安泰だろう"」

「や、柳先輩…」
「(柳くん気にしてたんだ…)」

「俺の番だね。"慣れない環境での精神状態は過酷を極め、対立もしばしばあったけどそれもそれぞれにとっていい経験になったと思う。ここでの生活を生かし、今後に繋げていけたらいい…と思うけどとりあえず家に帰ってベッドで休みたい、かな"」
「幸村…」
「"それから1番の思い出はと一緒に夜の海岸を歩いたこと。あんな綺麗な星を見れたの初めてだったから…一生忘れられない思い出だよ、ね?"」
「い、いや。ねって同意を求められても…」

そんないい笑顔でこっち見ないでください。想像なのに妙に照れくさいじゃないですか。



「ほら。次はの番だよ」
「あ、う、うん」

手を握り、にっこり微笑む幸村に3強の言葉のインパクトが強すぎてどうしよう、と悩んでいれば誰かの手で口を塞がれた。見れば仁王がにっこり微笑んでいて「トリはお前さんにやるぜよ」とのたまった。こいつ、最後が嫌で私に振ってきたな。

仁王コノヤロウ!と思ったが口を塞がれて何も言えなかった。


「そうじゃの。えーと、"無人島に来てまでテニスすることになるとは思わんかったぜよ"」
「え、そうなの?」

ラケットある設定だったの?と伺えば弦一郎が「当たり前だ!」と何故か胸を張っていた。電子機器がなくてラケットとボールがあるって…。有事の際もラケットは必ず持って出てくるのか、と内心引いた目で従兄を見てしまった。
テニス大事なのはわかってたけど、せめて服とかお金とか生活に大切なものも持っていきなよ。

「"楽しいか楽しくないかといわれれば微妙なところじゃがどんなところでも普通にテニスができるのはいいことじゃと思う。あと幸村の死に顔を見れんかったのが不幸中の幸いじゃった、マル"」
「…へぇ、」

仁王おおおおっお前勇者過ぎんだろおおおおおっ!めっちゃ幸村に掴まれてる手痛いんですけどおおおおっ!



幸村の周りだけ温度めっちゃ下がってる気がするんですけどおおおっ怖くてそっち見れないんだけどどうしてくれんの?!と睨めば「なんじゃ。思い出の中にお前さんの名前が出ないと不満か?」とのたまったのでちげーわ!と腕を叩いた。

「"ついでにブサイクなの泣き顔を気が済むまでじっくり見ることができて俺は満足ぜよ"」
「(そこ満足するとこじゃないし!)」
「"その可愛い泣き顔はベッドの上でまた見せてもらうから覚悟しておきんしゃいよ"」
「(んなっ?!)」

「に、ににににに仁王?!」
「仁王先輩?!どういうことっスか?!」

「…落ち着きんしゃい。あくまで想像の話ぜよ」
「「あ…」」
「それにしたって、言っていいことと、悪いことがあると思うけど」
「ピヨ」



ガタガタ!と立ち上がる弦一郎と赤也に仁王はニヤニヤとした顔で返したが彼らの顔は真っ赤のままだった。なんだよ、からかいたかっただけかよ。驚かすなよ。心臓に悪いな。
冷気が漂う笑顔でのたまう幸村に同意しながら仁王を睨めば「ほら、出番じゃ。しっかりシメんしゃいよ」と口を塞いでいた手を離した。

「え…」と見やればみんなの視線が突き刺さるようにに向かっていてうっと顔をしかめた。他愛の無い会話のはずがなにこの重々しい空気。


「あーえーと、」
、しっかりせんか」

「わかってるよ!ちょっと待って!!…"正直やっていけるのかなって不安もあったけど、いざ過ごしてみたら合宿みたいで結構楽しかったよ。
多分私1人だったら落ち込んで無理だっただろうけどみんなが一緒だったから最後まで乗り越えられたと思う…唯一心残りがあるとすれば、島とかみんなで作った家とか魚釣ってるとことかたくさんの思い出を写真に収められなかったってところかな、マル"」


作文か!くそう、本当は皆瀬さんみたいに簡潔にいいたかったのに前3人(仁王は別)のせいでやたらと真面目な文章になったじゃないか。小っ恥ずかしいわ、と眉をひそめるとぐいっと手を引っ張られふわりとウェーブがかかった髪が視界に入った。

…っそこまで考えていたなんて!」
「え?!ゆゆ幸村?!」

何抱きしめてんの?!え?え?と混乱していれば腕を引っ張られそのまま仁王の腕の中に落ちた。

「何をやっとるんじゃ。職権乱用じゃぞ」
「それをいうならそっちはセクハラだろ?」
「「……」」
「先輩!お、俺も感動し」
「「お前は引っ込んでろ、ワカメ」」
「しかし、がそこまで考えているとは思わなかったな」
「そうだね〜。私感動しちゃった」
「い、いや…普通に話してないで助けてくださいよ」



なんか頭の上で火花見えるんですけど。和やかに話しかけてくる柳と皆瀬さんには冷や汗を流しながら手を伸ばしたが誰にも届かなかった。
赤也もしょんぼりした顔で丸井とジャッカルに慰められてるし。これ本当に無人島行っても無事に帰って来れるんだろうか?


「当たり前だろぃ。俺達がそう簡単に負けるわけねーじゃん」

何が何でも帰ってみせるぜ、と視線に気がついた丸井がそう零し納得しかかったが彼は「ああそうだ」と付け加えた。

「ジャッカルは無人島に残るかもな。んで、猿のお嫁さん貰」
「いらねーよ!!」

俺も一緒に帰るわ!!と叫んだジャッカルに睨み合っていた仁王と幸村もブっと吹き出したのだった。




想像でガチゲンカする中学生(笑)萌え。
2013.04.21