異物




どのくらい経っただろうか。
いつの間にか馬の歩みがゆっくりになりは恐る恐る顔を上げた。

馬がこんなに揺れるなんて知らなかった…車酔いなんて滅多にしないのに気持ち悪いしお尻が死ぬほど痛い。
馬に手綱なんてものがないからどこにつかまっていいのかもわからなくて政宗にしがみついたけどこの人腕を組んでこっちに気遣うとか全然しなくて危うく振り落とされそうだった。

あまりの仕打ちに文句の1つでもいってやろうと視線を上げれば「ついたぜ」と彼はとは別の方を向いていた。それに即され目を前に持っていけばもう2度と見たくないと思ってた光景が広がっていた。


元は村だったのだろう。整えられた畑の中に集落があって、きっとここで何人もの人達が生活していたに違いない。けれどの目に映る光景はただの焼け崩れた廃村でしかなかった。
炭と化した木からは煙すらなく時間経過が伺われ、近くの牛舎には焼け爛れた牛がいて顔にハエがたかっている。その虚ろな目にぞくりと震えたは視線を逸らすと奥の方に人が倒れているのが見えた。

馬もそちらの方に向かっていてゆっくりと見えてくる顔にの表情が凍りついた。
あれは一瞬しか見えなかった。だけど鮮明に思い出せる。今地面に不憫な姿で横たわっているのはあの男達に身包みを剥がされていた人だ。


ここはが目覚めた場所だった。


「…っ!!」
「吐くんじゃねぇ。飲み込め」

あの時の匂いまで思い出し襲ってくる吐き気にうっと身体を傾けると口を押さえ込まれた。涙目で見上げると政宗は厳しい表情でじっとを見つめている。何で?と思ったけど彼の手を汚す訳にもいかずヒリヒリ痛む喉を動かすとなんとかせりあがったものを飲み込む。

眉を寄せ、咳き込むに「OK.There's a good girl」と頭を撫で初めて嬉しそうに微笑んだ。
それから来た道を引き返し、踏み荒らされた稲を眺めながらあぜ道を歩いていると追いついた小十郎と合流した。


「お前がいた村に間違いねぇな?」
「……はい」

問われた質問に頷くと政宗は懐からある物を取り出し「これをどこで手に入れた?」との前に差し出してきた。
シルバーで出来たネックレスは竜の形をしていて、爪はガラスのような青く光る玉を掴んでいる。どうやら私が着ていた着物から出てきたらしい。始めは見覚えもなくて首を傾げてたけど見てる内にあることを思い出し「あ、」と声を漏らす。

「これ、お祭りの時買ったやつだ」
「What?」


去年だろうか。友達とお祭りに行って露店を覗いた際に一目惚れして思わず買ってしまったネックレスにかなり似てる。むしろ同じ物じゃないだろうか?家に帰って何で買ったんだろうってちょっと後悔したのを思い出した。
だってこんなごついシルバーネックレスをつけるような格好を今迄したことがないのだ。

そういえば露天商のおじさん、変な人だったな…と思い出して溜息を吐くと「Hey」と声をかけられ顔を上げた。

「このNecklace、俺が預かってもかまわねぇか?」
「あ、はい」


むしろ政宗の方が似合ってるかもしれないなぁ、と考えあっさり頷いたに、奥にいた小十郎の眉間の皺が少し増えた。




-----------------------------
2011.04.27

BACK // TOP // NEXT