過保護な2人
「や、やめてください。小十郎、さま…」
そう紡ぐのがやっとだった。
早馬を休みなく飛ばして政宗がいる青葉城に着いたのは丁度夜が明ける頃だった。
寝てる門番を叩き起こし取り次いでもらおうとしたのだがは馬酔いが酷くて何も喋れなかった。ぐったりしてるの代わりに慶次が話してくれたが何故か門番は私の顔を見るなり真っ青になって城の中に駆けて行く。
その対応にいささか不安は感じたけどこれでもう大丈夫だ、という安堵感の方が大きくて近くの木陰で休むことにした。
日の出を眺めながらぼんやりしていると旅支度をしていた小十郎が珍しく息を切らせて現れ、私を見るなりあろうことか慶次をぶん殴った。
「嫁入り前の娘に何しやがった!!」とか「ぶっ殺してやる!!」とかただならない殺気を放つ小十郎は慶次の言葉など聞く気がないらしく抜刀した刀に雷を纏わせ今にもBASARA技を放とうとしてる。
馬から下りて難を逃れてたは回らない頭で何とか言葉を紡いだが、蚊の鳴くような声しか出なかった。
「Hey!小十郎。Partyの時間にゃちっとばかし早すぎねぇか?」
「?!っ政宗様…!」
「あっいいところに!頼むよっ俺は戦いに来たんじゃねぇんだ!」
「…テメェは小十郎に一度こってりと搾ってもらいな。毎度毎度門を壊しやがって」
毎度なのかよ慶次。気だるげに門に寄りかかる政宗は腕を組んで対峙する2人を見つめていた。どうやらがいることには気づいていないらしい。
右側の死角にいるはまだ具合が悪くて政宗に声をかけられず、刀を納めた小十郎にホッと息を吐いて成り行きを見守ることにした。
「んで、何しにきやがった」
「それがさ…って、あれ?」
「?どうした」
「俺はてっきり謙信や信玄公と和睦するもんだと思ってたんだけど…」
周りを見回しながら慶次は頭を掻いた。どうやら武田や上杉の人達がいないと思ってるらしい。そんなはずないでしょ?と見回したが気配が読めないにはわからなかった。というか、同盟が嘘だったらちょっと怒るかも。
「和睦じゃねぇ。一時休戦ってやつだ」と慶次の言葉を言い直すと溜息を吐き首の後ろをだるそうに掻いた。
「到着は昨日のはずだったが一向に来る気配がねぇ。武田も上杉もだ」
「じゃあ、同盟を組むっていうのは本当なんだ?」
「ああ。だが旗印も人の影も見えねぇ、使いも寄越さねぇじゃ話にならん」
「様子は見に行ったのか?」
「行かせたが戻ってきやしねぇ。何かあったには間違いねぇが状況はさっぱりわからねぇ」
「それで、俺が先行で出ることになったというわけだ」
「………」
「もし、奴らが謀り陥れたならここも戦になる」
「?!謙信がんなことするわけ」
「ああ。甲斐のおっさんも軍神もそんな回りくどいsolutionは仕掛けてこねぇだろうよ。だが俺にケンカを売るつもりなら買うまでだぜ」
裏があるようならつっぱねることだって出来る。政宗にとって今回の同盟はそれほど意味がないらしい。けれど利益がひとつもなかったら組むことだってないはず。それに…そこまで考えアッ!と声を漏らした。
「半兵衛…」
「!!…What?!?なんでここ、に…」
「慶次さん!あの人ですよ!髪の白い!!あの人が邪魔したんですよ!!!」
「!そうかっあいつの目的は同盟の反故か!」
「何だ?何の話をしてるんだ」
政宗にとっては大した同盟じゃないけど、半兵衛や織田にとってはそれなりに脅威だったのかもしれない。だったらあの多すぎる忍者も頷ける、そう思って慶次を見れば事情を知ってるとあってすぐに頷いてくれた。
逆に小十郎は眉を寄せ説明しろとばかりに視線を送ってくる。
「だったらこんなとこで悠長に話してる場合じゃねぇな!俺は謙信とこに向かうからそっちは虎のおっさんの方に向かってくれ!っ!!」
「えっ私も?!」
「旅は道連れっていうだろ?一緒に行こうぜ!」
馬の手綱を引き、爽やかな笑顔で手を差し出してくる慶次には苦笑して手を伸ばす。会って間もないのに一緒に連れてってもらえるのは素直に嬉しい。でも酔い止めの薬欲しかったな、と考えていると彼の手を取る前に腹が圧迫され身体が宙に浮いた。
顔を引きつらす慶次に急いで振り返るとさっきまで空気のように固まっていた政宗がを抱えパリパリと放電している。その刺激に痛いとかちょっと思ったが禍々しい殺気に声も出なかった。
「俺のkittyに何してんだ?テメェ…」
「へ?ちょっ待てよ落ち着けって!」
「Don't say anything!覚悟は出来てるんだろうなぁ?」
「俺は何もしてないって!むしろを助けたのは俺」
「いい訳はあの世で聞いてやるぜっDeath Fang!」
「ギャーっ!!!!」
手を振って一生懸命訴えた慶次だったが政宗は一切聞き入れようとせず、雀が鳴く晴れやかな空の中慶次の悲鳴が辺りに響き渡るのだった。
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2011.07.25
慶次ごめん。
英語は残念使用です。ご了承ください。
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