月見酒




夜、言われたとおりに政宗の部屋に向かうと政宗はいつものように縁側で月を見上げていた。月明かりに照らされ空を見上げる姿はかなり様になっていては少し離れた場所で立ち止まり暫し見惚れていた。

「先に始めてるぜ」
「あ、はい」
「いつもより早かったな」
「はい。今日は喜多さまにしごかれて。みんな疲れてたようです」
「HAHA!そりゃいいことだ。喜多もいい刺激になっただろうぜ」

そんだけ扱きがいがあるなら長生きするだろうよ。と笑う政宗には肩をすくめ笑い返した。しごかれたのは私もなんだけど。欠伸を噛み締めながら政宗の元へ向かった。

「ん?何だ?俺の顔になにかついてるか?」

あまりにもじっと見ていたせいか、政宗が面白そうに声をかけてくる。向けられた視線にドキリとしながら彼の横に座った。

「いえ、格好いいなと見惚れていました」
「Ahまぁな。ラフな格好も様になるだろ?」
「フフッそうですね」

上機嫌の政宗にお酒をついでもらい透明色の水を煽った。今日のは辛味が強いようだ。喉が焼ける熱さと鼻を抜ける感覚が心地いい。

「んで、干物だ」
「わぁ凄い!」

豪勢ですね、と笑うとこれくらいなら毎日だって用意してやるよと頭を撫でられた。


「そういえば、今日政宗さまの話をしました」
「An?俺がイカす男だって?」
「フフッそういう話もしましたけど、ご正室がいらっしゃるかどうか少し気になって」
「Ahその話な」

まるで耳にタコといわんばかりに興味をなくした声が返ってくる。いない方がおかしいのに今になって失言じゃないかと気づく。

「あ、あの」
「いるぜ」


この話はなかったことに、といおうとしたがその前に政宗が答えてしまった。そのせいで逆にの胸がぎゅっと締め付けられる。

「いるにはいるがまともに顔も会わせちゃいねぇよ。つーわけで世継ぎもいねぇ」
「そ、そうなんですか…」

聞けば聞くほど胸が苦しくなった。余程政宗に奥さんがいてショックだったらしい。当たり前だと頭ではわかってるのに今まで積み上げた感覚が拒絶してるみたいだ。


「スミマセン…」
「別にが悪い訳じゃねぇよ。ジジィ共がその件で今日も説教をたれてたのを思い出しただけだ」

それってかなり地雷じゃないか。
しまった、と頭を垂れれば引き戻すように「」と呼ばれた。


「お前も室に興味あんのか?」
「室…?……っや!その!」
「ククッお前にも人並みの感覚があったんだな」

正室だの側室だの興味ないと思ってたぜ、そういって政宗は笑うと手に持っていたお猪口を煽った。どうやら結婚=出産=女の幸せが私にはないと思っていたらしい。

「失礼ですね!私だってそういうの考えますよ!」
「Aha?じゃあ俺の子を生む気はあるってことだな」
「なっなんでそうなるんですか!」

いきなり飛んだ話題に思わず声を荒げてしまう。それに驚いたのは政宗で慌てての口元を押さえると「Be quiet!」と小さく囁いた。


「まったく、普通の女は俺の子を産めるなんて聞いたら一族総出で祝杯を挙げるところなんだがな…」
「すみませんね。普通じゃなくて」

そりゃこの時代の人達はそうでしょうよ。もう人生安泰最強就職先だもんね。まぁ政宗が負けなければ、が前提だけどそれまでは幸せ一直線なのは間違いない。けど私はその辺ずれてるんだよな。きっと。




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2011.09.07
英語は残念使用です。ご了承ください。

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