# 03

優作さんの執筆もひと段落し、次の原稿まで気分転換をしよう、ということになり夫婦揃って旅行に行くことになった。
は宿泊やチケットの手配をひと通り済ませ、夫婦水入らずで送り出そうとしたが途中立ち寄った日本で何故か沖矢昴が待ち構えていて少なからず驚いた。

聞けば沖矢が住んでいたボロアパートが火事で燃えて今日本にある工藤邸に居候しているらしい。コナンは今毛利家に居候しているから実質1人で住んでいるわけだが、その彼が何故迎えに?と首を傾げ両親を伺った。

ちゃんは今日から秀ちゃ……昴さんと住んでね」
「え?は?」
ちゃんのチケット日本まででしょう?優作さんと水入らずで旅行させてくれるのは嬉しいんだけど、ちゃんを1人で過ごさせるのは心配なのよ〜」
「そういわれても…」

コナンの姿をこっそり確認して満足した両親を連れて空港に戻ると、そんなことをいわれ目を見開いた。傍目から見たらそこまでではないらしいが有希子さんは構わず笑みを深めを反転させると両肩を掴み、前へと押し出した。


「だーかーら!今回は秀ちゃ…昴さんにボディーガードになってもらおうと思って!ね!」
「成人した女性であるキミを制限することは私も心苦しいんだが、大人である前に私達の娘だからね。多少の我儘は許してほしい」
「優作さん…」
「それに見たところ彼は誠実そうだ」

義父にそこまでいわれては敵わない。少し離れたところで待っている沖矢を視界に入れ少し悩んだは諦めたように肩を落とした。



「有希子さんの話、気にしなくていいですからね」

義理の夫婦を見送り空港を出ると隣でスマートにの荷物を引いている沖矢を見上げた。彼はなんのことですか?と首を傾げ駐車場へと歩いていく。バス停は逆方向なんだけどな、と思いつつカートの取っ手部分を掴み引き留めた。

「別に監視がついているわけじゃないですし、住む場所ももう決まってるのでここまでで結構ですよ」

義理の両親には申し訳ないが正直顔見知りとはいえ裏がありまくる他人と住むのはストレスでしかない。相手だって恩人の頼みとはいえ面倒ごとは抱えたくないはずだ。
告げ口はしないからこのまま別れましょう、と進言したが沖矢は困ったように眉尻を下げると「困りましたね」と言葉にして唸った。


「有希子さんに頼まれてあなたの部屋の掃除と内装を整えたのですが…全部無駄になってしまいますね…」
「……」
「口裏を合わせるにしても一度見てもらえませんか?2階ならどこでもいいといわれたので適当な場所を選んでしまったので。そのチェックも兼ねて」

心底申し訳なさそうに零す沖矢には片手で顔を覆うと「うちの母がスミマセン…」と溜息交じりで謝った。

この人は潜伏してて何かと忙しい人だっていってましたよね?そんな人を捕まえて何させてるの、ともう一度溜息をつくと新一達が住んでいた、現在は沖矢が居候している工藤邸へと向かうべく彼の車へと向かった。