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意外だ。かなり意外。

周りのことまで考えてなさそうなのにさらっと普通に褒めてきた。
意外過ぎて正直驚きしかなかったけどやっと言葉が頭に回ってきては顔を手で覆った。

なんという破壊力。

ただの補助だからたいしたことはしてないと自負している。
とりあえず早く仕事を覚えてみんなの邪魔にならないようにサポートできればいいと思っていたけどなかなか上手くできなくて水戸部先輩とか他の人達に手伝ってもらいながらこなしてるのが現状だ。

だからいらない、といわれてもいてほしい、なんていわれると思ってなかった。しかも黒子君以外の人に、だ。


指の隙間からちらりと見ればフェンスの向こう側で楽しくバスケをしている3人がいる。
1人は一応病院でなんともないといわれたとはいえ頭に包帯を巻いている黒子君と、もう1人は何をしてても様になるというか変なキラキラオーラが出ている黄瀬君。そして先程に爆弾発言(というものでもなかったかもしれないけど)をかました火神だ。

火神は黒子君からパスを貰うと素早い動きでダンクシュートを決め、勝負はあっという間に決着がついてしまった。

5対3だというのに歴然過ぎるでしょ。というか、火神の潜在能力ヤバくない?キセキの世代の2人と遜色なく試合してたんだけど。



いち早く黄瀬君を見つけたせいで石化し黒子君まで辿り着けなかったけど、火神が代わりに割って入ってくれ、途中ケンカするかも、みたいな危険な雰囲気もあったけど、黒子君が隣でやっていたストリートバスケのいざこざに首を突っ込んだことでなんとなく有耶無耶になったようだ。

普通に話をしている3人を見て男子ってわからんな、と考えていると黄瀬君がジャケットを肩にかけ2人から離れたのではすぐさま壁際で貝のように小さく蹲った。
必要なかったがなんとなく自分の存在を空気にしたくて息を止めると心臓の音がやたらと大きく身体に振動を与えてくる。

何も起こりませんように。何も起こりませんように。と念じていると携帯が震え、恐る恐るポケットから取り出した。相田先輩からだ。


そうだ。相田先輩達に黒子君のことを連絡しないと。
そう思い、少し顔を上げたところで肩をぽんぽんと叩かれた。



「すみませんっス。俺の用事終わったんでもう大丈夫っスよ」



誠凛のマネージャーさんっスよね?にこやかに、それはもう無駄に爽やかでキラキラとした笑顔での肩を叩いた黄瀬涼太君は目線が合うように屈んでくれている。老眼でも彼の顔が良く見えるくらい近かった。


「は、はい…ありがとうございます……」


何をもってありがとうございますなのかわからなかったが隠れていたことがバレてたということと、マネージャーだって知ってたことに頭が真っ白になりそれくらいの言葉しか出てこなかった。

の礼を聞いた黄瀬君はこれまた営業スマイルのようにいい笑顔で微笑むと「それじゃ、また」といって軽い足取りでその場を去っていった。




2019/06/05
ワンコ黄瀬好きなんですがワンコ発動は黒子に対してのみになりそうです。