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「マネージャー!」
2日ぶりに参加した部活で後片付けをしていると珍しく伊月先輩から声をかけられた。どうしました?と聞けば彼は周りを伺いそして「近くに黒子いる?」と彼がいないことを確認してから息をついた。
「悪いんだけど、黒子のことちょっと見ておいてくんない?」
「?はい。わかりました」
「あーできれば今日の帰りとか…用事あったりする?」
「ないので大丈夫です」
内緒話をするかのように顔を近づける伊月先輩になんとなく背筋を正すと、彼は小さく笑って「本当ならを送ってあげるべきなんだけど」と頭を撫でられた。
「いえ。今はテツヤ君の方が心配ですし」
「まあ、火神と違って黒子が何かやらかすなんてことはないだろうからそこまで心配する必要はないんだけどさ」
一応な、といって顔を上げると小金井先輩が伊月先輩を呼んだ。
「んじゃ、頼んだぜ」
「はい。お疲れさまでした」
「おーい!は一緒に帰るのー?」
「用事があるって!」
「マジで?気を付けて帰れよー」
「はい!」
「あ、水戸部も心配してるって!帰り明るいとこ通って帰るんだぞーっていってる!」
「はい!ありがとうございます!」
体育館の出入口にいる小金井先輩達と話すのに少し声を張り上げていたが、が一緒に帰らないと聞いて先輩達がこぞって心配してくれた。
何かの折に方向が一緒だと発覚して以来、途中までちょこちょこ一緒に帰ってもらっていたのだ。
1人で帰っても今のところ特に問題はないんだけど、先輩達の優しさが温かくて嬉しくて甘えさせてもらっている。
だからこういう風に少し寂しそうに、心配してもらえると胸の辺りがきゅっと締め付けられて私も一緒に帰りたいといいたい気持ちになってしまう。
そんな小さな気持ちを飲み込んで手を振ると先輩達が手を振り返してくれた。
「伊月ー鼻の下伸びてるぞー」「うっせーよ!」という声を聞きながらはこっそり笑った。見なくてもその光景が浮かんだからかもしれない。
そういえば高校に上がって黒子君と一緒に帰ったのはあまりなかったな。帰る方向も違うし。先に帰られない内に連絡しておこう、と携帯を取り出し素早くメールを打ったは自分の片づけを急いだ。
素早く着替えを終え携帯を開くと黒子君から体育館にいるとメールが返ってきていた。
急ぎ足で向かえば黒子君の他にも先客がいるらしい。
「割り切るのは大したもんだよ。けど、割り切り過ぎかもよ」
中を覗き見れば知らない人が黒子君にそんなことを話しかけそして買ったお菓子を踏んで嘆いていた。誰だろう。
2号がに反応した為に話していた人を驚かせてしまったようだが彼はにこやかに去って行ってしまった。
そのことを帰り道で黒子君に聞いてみたらバスケ部の先輩らしい。木吉鉄平というそうだ。
もしかして、相田先輩がいってた先輩かな、と思い出していると黒子君が「さっきの話聞いていましたか?」と静かに聞いてきた。
「うん、少し」
「…ボクは、割り切り過ぎなんでしょうか」
「…どうだろうね」
それを答えたところで黒子君の求める答えなのか、むしろ彼は他人の答えを本当に求めているのかよくわからなくては困った顔で濁した。
多分凄く悩んでいるんだろう。いっそ途方に暮れるくらい。
人間観察が趣味という黒子君が話してる相手のリアクションすら見ることを忘れるくらい苛まれているんだろう。
でも気づいてる?黒子君、キミは青峰君との試合が終わってから1度もこっちを見て話してないんだよ。
「じゃあ私こっちだから」
「はい」
別れ際もそぞろに行ってしまう黒子君には困ったように笑ったまま、早く答えが出るといいね、と心底思った。
2019/06/13