42


体調もある程度戻ったので登校したら火神に呼び出された。

何かの拍子に2人きりで話すことは多々あったが黒子君抜きで火神が呼び出す、というのは初めてだった。

定番のように連れてこられた屋上は日が出ているものの風がやたらと冷たく肌寒い気がする。目の前の火神に視線を移せば彼は眉を寄せたままを見つめた。その視線が少し怖いと思った。


「フリ達が心配してたぞ」
「え?何で?」
「お前が黄瀬のことで吐いたからに決まってんだろ」

投げられた言葉はの心を大きく強打して行く。できればもう少し期間をあけて話をしてほしかった。
人前でリバースするとか何年ぶりだろうって家で散々頭を抱えていたのだ。それを直球でいわれるのは正直耐え難い。


「全部話せとはいわねーが、フリ達にある程度話した方がいいんじゃねぇか?」


黄瀬や紫原のこと。その言葉にの身体が強張った。話さなきゃいけないのだろうか。いや、ここまで痴態を晒しておいて何も話さないは余計に心配事を増やしてるだけかもしれない。

わかってはいたけど『迷惑かけてたんだ』とわかった視線を下げた。



「ごめん、」
「いや、俺は別に謝ってほしいわけじゃ」
「近いうちにちゃんと話すよ。…でも、ちょっと心の準備があるから、時間がほしいです」

降旗君達が気にしてるってことはリコ先輩や日向先輩達も気にしているだろう。ただ、触れてはいけないものだろうとわかって触れないでいてくれてるだけで。

「いってくれてありがとう。あと迷惑かけてごめん」

火神にいわれなければこのまま甘えて何もいわなかった。気づかせてくれてありがとう、と礼を言えば火神は変な顔をしたが「だからお前が謝る必要はねぇんだけど。まあ、深く考えこむなよ…」とか他にも何か言っていた気がしたけど耳には残らなくてやたらと風の音が煩かった。




2019/07/13