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涙も収まり鼻をすすりながら体育館用具室を出るとドア近くの壁に黒子君が座っていてと火神は驚いた。
話は全部聞かれてたみたいで、最近頓に見る何か言いたげだけど何も言えない彼の表情を見ては止まった涙がまた込みあがる。
まだ震えは残ってたけど両手を差し出せば何も言わず抱きしめてくれ、そんな優しい彼には「心配かけてごめんね」と謝り抱きしめ返した。
その温かさを胸には廊下を歩く。先に体育館のドアを開けたリコ先輩に続き、足を踏み入れた。
中では既に選手達が練習していて黒子君や火神の姿もあった。
ドアが開いた音との登場で選手達は一斉に動きを止める。一斉に注がれる視線に肩が強張った。視線を横にずらせばこっちを見ているリコ先輩と目が合う。
表情の硬いをリコ先輩は困ったように微笑んだが「大丈夫よ」と小さくいって頷いた。
も神妙な顔で頷くと大きく深呼吸をする。飛び出そうな心臓を押し込めるように胸を手で抑え込んだ。
ああ、手足が震える。緊張で吐きそうだ。グルグルするお腹には少し焦りながらも大きく息を吸い込んだ。
「い…1年B組!!私の目標は、キセリョや紫原君を克服することです!
私が勝手に苦手で、もしかしたら嫌いで勝手に怖がってるだけだけどみんなとバスケをしたいし手伝いたい!ので!
あと、あわよくば、全国で2人の学校をぶっ飛ばしてほしいです!よろしくお願いします!!」
い、いえた…!けど、物凄く恥ずかしい!!
これを全校生徒の前でやるとか火神達の度胸半端ないよ。
長距離を走った後のように赤い顔で短く息を繰り返すは何度か深呼吸をして前を見た。
みんなの発言に呆気に取られていたようだが誰かが、というか火神が吹き出し、黒子君と日向先輩が拍手をすると続くようにみんなが手を叩き、を驚かせた。
「黄瀬と紫原どころか、キセキの世代みんなぶっ飛ばしてやるよ!」
「火神君、暴力はいけませんよ」
「何でそうなんだよ!」
「まさかマネージャーが"ぶっ飛ばす"なんて言葉を使う日が来るなんてな…日向の言葉遣いがうつったんじゃないか?」
「はあ?いや、俺じゃねぇだろ」
「日向ダメだぞ。後輩にそんな汚い言葉を教えちゃ」
「何で俺が教え込んだ前提なんだよ!!」
つか、汚いってなんだよ!俺は汚物か!と吠える日向先輩に一同からどっと笑い声が響く。それを茫然と見ていただったが視界にリコ先輩が入り彼女を見やった。
「おかえり。」
「ただいまです。リコ先輩」
にこやかに微笑んだリコ先輩はの肩に手を回すと「よおし!休んだ分ビシバシしごいていくわよ!」とスパルタ宣言をし、の顔を引きつらせた。
でもそれは彼女の愛情だって届いて、それがむず痒くて、自然と笑みがこぼれたのだった。
2019/07/13
おかえりなさい。