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ウインターカップ予選当日朝、校門前に集合することになっていたは2号の世話をしてからみんなを待っていた。
2号は嬉しそうに水戸部先輩達と戯れている。ああ、折角着せた服が砂まみれに…と思ったのは内緒だ。

リコ先輩が嬉々として提案した2号のユニフォームをが夜なべをして作ったのだ。裁縫なんて料理よりやってないから地味に苦労した。
それもあって新ユニフォームのデザインを隅々見れたのだけど、出来上がりは上々なので可愛がられてる2号を見てもほっこりしている。


そして相も変わらず試合前日は眠れなくて目を真っ赤にしている火神を尻目に時計を確認すると「それに、ここんとこにも負けなしだからな!」と自分の名前を出され顔を上げた。


「え、もしかしてとバスケの練習でもしてんの?」


バスケできたっけ?みたいな顔でこっちを見てくる降旗君達には困った顔で違うと首を横に振った。

「火神君とやってたのは指相撲だよ」
「「「指相撲?」」」


火神が左手の特訓をしている時にひょんなことから指相撲をすることになったのだ。
なんでそんなことになったのかもう思い出せないけどゲームで鍛えた親指は火神にとっては脅威だったようで、ものの見事に圧勝してしまったのがことの始まりだった。

それからというもの、空いた時間に指相撲をする羽目になったのだが指圧は火神の方が強かったし躍起になって手加減を忘れるから捕まったらかなり痛いのだ。



「まだ32勝21敗だけどね」
「なっ!まだそんなだったか?」
「そうよ。そろそろ追いつかれそうだけど」
「うわ、火神負けてんじゃん」
「数も半端ないな…」
「こ、ここ最近はずっと連勝してんだよ!」
「マネージャー。指無事か?無理すんなよ」

こっから追い上げてやらあ!と吠える火神にを始めとした周りが『そういう話じゃねーよ』と白けた目で見たのはいうまでもない。



*



遅刻を黙秘する黒子君を追求するためにを巻き込む火神を押し退けながら予選会場へと向かう。

今回、試合会場に来てにいるのはインターハイ予選で勝ち抜いた8校だ。その8校で試合をし4校まで絞る。そしてその4校でリーグ戦をして上位2校がウインターカップ出場となる、という寸法だ。

表には高尾君や緑間君がいる秀徳高校の名前も勿論ある。今日の試合では当たらないけど、次のリーグ戦では確実に当たるだろう。
信じてはいるものの、少し不安な気持ちになっているとリコ先輩に呼ばれた。


。悪いんだけど、今日は観客席で接待してもらえる?」
「え、接待、ですか?」

応援じゃなくて接待?聞き慣れない言葉に顔を強張らせるとリコ先輩はうんざりした顔で「何の気まぐれか今日の試合校長先生がくるらしいのよ」と教えてくれた。

「武田先生もいるから問題ないとは思うんだけど、今年もちょっとやらかしてるじゃない?一応保険でにフォローしてほしいのよ」


リコ先輩は現在生徒会副会長なのでちょっとやそっとでは先生の好感度は下がらないと思うが、口の悪い日向先輩や一挙一動がやたらと目立つ火神が何かやらかした時の言い訳をにお願いしたいのだという。

「あいつらにもいっておくから」と耳打ちをされはそれならば、と頷きみんなが向かうコートとは別の方へと走り出した。



「(み、みんな落ち着いて〜)」

校長先生が来るからスポーツマンシップに乗っ取っていい子ちゃんでいます、と宣言していたにも関わらずリコ先輩自らブチ切れるというアクシデントに観客席にいるはヒヤヒヤしながら試合を観ていた。

しかも試合では火神ががっちり丞成高校にマークされていつもの動きを全然させてもらえてない。そのストレスで今にもキレそうになってる。

だ、大丈夫だろうか。と不安げに見ていたら木吉先輩が火神の頭を叩くように撫で、そしてこっちを指さした。
え、何?と目を瞬かせているとこっちを見た火神が同じように目を瞬かせ、そして不貞腐れるように口を尖らせそっぽを向いた。人の顔見てなんなのあの子。

火神が黒子君に話しかけられている光景を見ながら大丈夫かなぁ、と思っていると隣に座っている校長先生が「ちゃんと勝てるんですかね」とこちらも不安げに武田先生に聞いていた。


「大丈夫です。誠凛のバスケ部は強いですから」

武田先生に引き続き、もにっこり微笑めば校長先生もそうならいいか、みたいな返しで試合に視線を戻した。

勝てると思うけど、ケンカだけはしないでよ。強いと信じていてもやっぱり不安になったは指を組んでこっそりと『無事試合に勝ちますように』と神様にお願いしたのだった。




2019/07/15
「ぶち殺せ(超いい笑顔)」のリコたんが大好きです。