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ウインターカップ予選が終わり、束の間の学校生活に戻ったバスケ部だったが、皆一様に気の抜けたような毎日を過ごしていた。

本戦までまだ猶予があるからその中だるみもあるのだろうが、予選での緊張感は思ったよりも長く続いた為、日常生活に切り替えるにはまだ少しかかり、逆に物足りなさを感じていて普通の生活に戻れないでいた。

も似たような気持ちで欠伸を噛み締め授業を受けていたが『テストに出る』という先生の言葉に眠い目をこじ開けてノートを取った。頭に入るかは別として、だけど。


「テツヤ君。ずっとそわそわしっぱなしだね」
「はい。なんだか落ち着かなくて」

休み時間、いつものように黒子君達がいる席へ向かうと水色頭の青年は机と自分でボールを挟みながらそわそわと身体を小刻みに揺れている。

さっきはボールを弄っていたが火神に取られてバスケを始めそうだったのでが禁止令を出したのだ。火神も火神でまだふわふわとしているからボールを見ると感情が揺さぶられて落ち着かなくなるらしい。


黒子君を見るといつもの顔のまま落ち着きなく身体を揺らしていてちょっと面白い。やっぱりウインターカップ本戦に行けることが心底嬉しかったのかな。

そわそわとする黒子君にこの子座敷童か何かかな、と思いながら眺めていると「なあ、」と前の席に座る火神に声をかけられそちらを向いた。

「学校ってどんくらい休んでも大丈夫なんだ?」
「は?」



唐突にとんでもないことを聞く火神に何いってんの?と思ったが、そういえば前に火神に出席日数の話をしたことあったな、と思い出した。

とりあえず誠凛はこれくらいかな、と前に見た校則の話をすると彼は腕を組み考え込んだ。学校を休んでバスケットの練習に集中したいとかそういうのだろうか。


「でも今月は期末テストもあるし、赤点取ると再テスト地獄になるからあんま休まない方がいいと思うよ」
「今回は緑間君の鉛筆は貸せませんのでちゃんと勉強した方がいいと思います」
「わーってるよ!」

あの勉強合宿をまたやりたくはないでしょう?と釘を刺す黒子君に火神は嫌そうに顔を歪めるとぶつぶつと文句をいってまた考え込むのだった。



*



体調不良という理由で学校を休みまくったは課題も忘れた為尾白先生に罰則を与えられていたのだが、あまりにも回数が多いため目をつけられたらしく何かの如く先生に呼び出されることが多かった。

最近は茶飲み仲間というかただの話相手になりつつあるが手元のプリント作成は雑用以外の何者でもないな、と思った。


「え、そうなんですか?」

黙々と何枚ものプリントを揃えてはホチキスで留める、という作業を続けていると、尾白先生と話していた先生に他の先生が混ざってきて衝立の向こう側が更に騒がしくなった。何かあったらしい。

聞き耳をたてていると姉妹校がどうとか留学がどうとか聞こえてくる。そういえばうちの学校って海外に繋がりあったっけ。とぼんやり考えていると尾白先生がひょいっとこちらに顔を出してきた。


さんの先輩で留学に興味ある子、いる?」
「え、先輩、ですか…?」

留学に興味ある先輩…?と考えてみたがリコ先輩くらいしか思いつかなかった。
でも今はウインターカップで頭がいっぱいだろうしな、と思いつつもなんとなく気になったので詳細を聞いてみることにした。



*



次の日の放課後、掃除当番の黒子君を置いて先に部活に向かっていると後ろから火神がやってきて自然な流れで一緒に歩くことになった。

「もう終わったの?告白」
「……ああ、」

何か嫌そうな顔。もっと喜んだら?といってみたが彼はただただ嫌そうに「今作っても面倒なだけだ」といってそっぽを向いてしまった。それはそうかもしれないけど。


「そういえばさ。昨日尾白先生と話してたら面白い話聞いてね」
「面白い話?」
「面白いっていっても私らには関係ないんだけど…うちの学校って海外に姉妹校があってさ」
「姉妹校?そんなもんあったのか」
「あったよ。私も昨日思い出したけど。で、先輩がそれ申請してたらしいんだけど病気だか家の事情だかで行けなくなったんだって。
そこまではままある話らしいんだけどその留学っていうのがかなり特殊で前例がなかったから扱いに困ってるらしいよ」

「困るってどんなだよ」
「ざっくりいえば取り下げが出来ないんだって。なんか国とか企業とか学校と関係ないとこが絡んでるみたいなこともいってたけど尾白先生大袈裟にいう人だからその辺は気にしなくていいと思う」
「……」
「取り下げが出来ないから今先生達がてんやわんやしてるみたい。昨日も色々話してたし。まあ、留学の時期が差し迫ってて、有望かつ信頼性のある能力のある生徒をいきなり探すってなかなか…っ」
!」

難しいよね、といおうとしたら火神に両肩を捕まれ無理矢理向き合わされた。じっと見つめてくる視線は真剣そのもので『え?何?』と驚いた。



「その留学先ってどこだ?」
「えっと、確かアメリカのロサンゼルス…かな」
「それって冬休み後か?前か?」
「え?どうだろ…」

聞いてみなくちゃわからないんだけど、と返せば火神はの手を掴むと体育館とは逆の方へ歩き出した。いや、走ってる。

「え、え、ちょっと!部活は?!」
「それは後だ!その前に尾白に話を聞く!」
「ま、まさか」

留学するつもり?!と驚けば火神がニヤリと笑った。


「いやいやいや!簡単に行けるわけないでしょ?!しかも1年で!」
「わっかんねーだろ!少なくとも俺には将来有望かつ信頼性があるからな!」
「どっからくるのその自信!」

走る速さが合わなくてこけないようにしながら先輩達並のツッコミを入れてみたが火神には効かなかった。行く気満々じゃないか。


「ていうか、ビザとかあんの?!」
「あるに決まってんだろ!新しいの貰ったばっかだよ!」

そうだ。火神は帰国子女だった。そんなことを今更思い出し「留学できれば学校行かなくてすむぜ!」と豪語する火神になんかそれ違う!とまたツッコミをいれたのだった。




2019/07/21
2019/07/29 修正
適当に辻褄合わせの設定作りました(模造です)。