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「「………」」
テスト期間に入り、部活動も自動的に休みになったはマジバーガーに来ていた。
4人席を確保し、片方のテーブルには山盛りのハンバーガーと飲み物、もう片方のテーブルには勉強とは関係ない書類が何枚も置いてあった。
その書類を火神と一緒に睨むように見ていたが先に火神が溜息と一緒にのけぞった。
「ダーメだ。わっかんね」
「わかんねーじゃないよ。これやらないと行けないんだから」
「けどよ、出したところで通らねぇかもしんねーんだろ?」
「今更弱気発言しないの」
の手元とテーブルに置いてあるのは尾白先生が言っていた欠員の出た留学手続きだ。一応火神の熱烈アピール?で先生達が気圧されとりあえず出してみるだけ出してみようか、ということになったのだ。
本当は申請と一緒に今睨めっこしてる書類も出すべきらしいんだけど、時間がないので後日提出でも大丈夫、となったようだ。
今達が見ているのは留学用手続きの変更手続きだ。一応姉妹校なのと、先輩が途中まで準備してくれてたものをそのまま流用する予定だから小難しいことはあまりない、と思う。
名前だけ書かれた申請書を奪取された時は本当に大丈夫か心配になったけど多分大丈夫だろう。
そんな訳で、話を持ち掛けてしまったは流されるまま火神の留学手続きを手伝ってるのだけど、行きたい本人は書類に書かれてる文章の羅列に諦めてしまったらしい。
一応先生から見本の書面を貰ってるからそれでなんとかなるだろう、と思いつつ火神を急かせ書類を書かせた。
「というか、本当に行きたいんだね」
「…まぁな」
「あっちの方が練習になる?」
見本と睨めっこをしながら書いている火神を眺めながら話をしていると彼は顔をあげ、こちらを見た。「ああ、」と返す瞳は真剣そのものでなんとなく寂しい気持ちになったものの「そっか」と返した。
「なんつーか、あっちの方が慣れ親しんだもんがあるんだよ。空気っつーか覇気っつーか。単純に技術も揃う面子の体格も違うしな」
「ふぅん」
「青峰のプレイを目の当たりにした時アメリカのストリートバスケを思い出したんだよ。それからずっと忘れられなくて……辰也と再会して確信した」
「……」
「俺に今足りないものがあそこにあるんだってな」
火神の頭の中は寝ても覚めてもバスケ一色だ。そりゃ告白されても断るか。それに今はウインターカップでいっぱいだ。
そこで再戦するであろう青峰やキセキの世代に勝つために、その為に火神はアメリカに行きたいのだ。
「それにあっちにはなんつーか、師匠、みたいな人もいるしな」
「師匠?」
火神がそこまでいう人なんて珍しい。俺様って程じゃないけど火神は指示をされるのがあまり好きじゃない。
納得いかないことだとリコ先輩でも不貞腐れ顔でやっているくらいだ。それがまたリコ先輩の加虐心をくすぐるのだろうけど。
でもそうか。アメリカに行けたらその師匠にまた師事してもらえるかもしれないのか。目も悪くないのに鼻先がつきそうなくらい顔を近づけ書類を書いてる火神に青春だなあ、と頬杖をつきながら口許を緩めた。
「申請通ったら、というかその書類出したらリコ先輩にいうんだよ」
「ああ」
「テツヤ君にはもういった?」
「いってねぇ。いって落ちたら嫌だしよ」
期待して落ち込むのは俺だけでいいし、と弱気なことをいう火神に小さく笑った。
「火神君」
「あん?」
「行けるといいね。アメリカ」
なんとなく行ける気がするけど。でもそれはいわずに火神を眺めていれば、顔を上げた彼がを見て目を大きく見開いた。
驚いたような顔に何?と首を傾げれば火神は忙しなく視線を右往左往させ頭を乱暴に掻くと顔を逸らした。
「行くに決まってんだろ」
そういい直した火神はまた書類と睨めっこをするのだが、そんな彼がなんだか可愛いというか面白くては吹き出すように笑ったのだった。
2019/07/21
2019/07/29 修正
デート。