青峰にマタタビ




<注意事項>
※ネームレス。
※青峰視点なので全体的に下品。
※青峰寄りなので他キャラ推しの方は特にご注意ください。
※いっそifかもしれない。




見知らぬ土地の、初めて泊まった旅館で、しかも人通りが全然ない人知れぬ場所で、こっそりと深夜に、こんなことをするなんて興奮しない方がおかしいだろ、と青峰は思った。

近くには自販機がブオンブオンと音を立てているが、それに負けないくらい荒い息遣いがこの空間に響いていてそれだけでも興奮を増長させた。


目の前には赤い顔で目尻に涙を浮かべながらも必死に逃げようともがく女がいる。彼女は同中で高校は恐らく別なんだろうがどこに行っても必ずといってもいいほど偶然のように出会う変な女だった。

残念ながら名前は未だに知らない。

どこに住んでるかとか高校はどこかとかも知らない。聞きそびれたまま今に至る。
中学の頃は今日が最後だろ、程度に思ってたからそれでいいと思っていたがこの頃は名前くらいは聞かねぇとヤベーかな、なんて思っていた。


「(名前知らねぇと呼べねぇし)」

知らなくても声をかければ振り返る彼女なので特に問題なさそうだが、こういう時は不便な気がする。なんというか、こいつの名前を呼びたい。そんな気分だった。

「なあ、お前の名前…」

なんていうんだ?と口を離したついでに聞いてみたが途中で言葉が詰まった。
彼女の肩に腕を回し密着するように引き寄せていたが、青峰のその腕にコテン、と頭を乗せ大きく肩で息をしている女に思わず息を呑んだ。



髪はまだ少し湿っていたがちゃんと整えられていたはずだ。どうやらキスに夢中になって髪もぐちゃぐちゃにしてしまったらしい。
乱れた髪の隙間からは重ね過ぎた唇が腫れたように真っ赤に映っていて、いやらしいこの上なかった。

布越しからでもわかるくらい肌は熱いし、首や頬はピンクになってるし、色気も何もないはずのジャージの隙間からは石鹸の匂いに混じってコイツ独特のいい匂いもしやがる。

これ、マジでヤバいやつかも…と何度か温度が上がった頭で考えていたら、「え?な、に…?」とトロンとした目に見られ、躊躇という言葉が吹っ飛んだ。


「んぅ…」


顎を捉え、逃げれないように固定してまた口を塞ぐ。これだけ密着してるんだから逃げることなんてできないだろうけど完全に雰囲気だ。
コイツはコイツでこっちを焚きつけるような反応してくるからどうしようもない。


一応言い訳をするとこんなことをするつもりはなかった。適当に寝て若松達が寝静まった頃に戻ればいいか、と思っていた程度だった。コイツが寝ているのを見た時だってアホ面、と思ったほどだ。

(偶然というにはあまりにも変なところで会うものだから)コイツ俺に気があるみたいだし、悪戯でもしてやるか、というほんの出来心でキスをしただけだった。

「(それがこうなるなんて、なあ…)」



コイツがあるかなしか、と問われたら実はなし側だったりする。巨乳のまいちゃん派としては胸は絶対、顔もできればいい方がいい。
そんな感じで考えていたのだが未だにまいちゃん並の女には出会えないでいる。

身近に幼馴染のさつきがいるがアイツの胸だけはいつか揉んでみたいと思うものの、想像してることすらバレたら次の日死体となって海に浮かんでいるので死ぬまでいうまいと心に決めていた。胸は好きだが命は惜しい。

目下の女は自分の理想には及ばず、他の女と大して変わらないと思っていたが、横暴だとか傲慢だとかさつきに散々なことをいわれたことがある青峰でも、付き合ってもいない女にここまで夢中になってキスをしたことはなかった。

本当に最初の最初は悪戯のつもりで、嫌がるコイツを見て笑って去るつもりだったのだ。


青峰は口だけじゃ飽き足らず頬や耳、それから首筋を食むように唇を這わせると腕の中の彼女がビクッと肩を跳ねさせる。その度に息を呑む音が聞こえ、青峰のTシャツをきつく握りしめた。

キスをしてみてわかったのだがコイツ感度がむちゃくちゃいいのだ。嫌だとかヤメロとかいうけど顔は真っ赤だし、誘うような潤んだ目をしてるし、むしろ服引っ張ってくるし。

コイツやっぱ俺のこと好きなんじゃね?と、やたらといい匂いがする首筋をべろりと舐めれば「ひぁ」と震えた身体と一緒に上擦った声が漏れた。この声がやたらと股間に来る。


「(巨乳以外に新たな性癖できるかも…)」

なし側だと思ってたけど前言撤回せざるえない程、ある意味理想とは真逆の彼女に青峰は興奮して、勢い余って彼女の胸に触れれば、そこははっきりと拒絶された。



「や、だ。触んないで…っ」

これにはちょっと驚き彼女を見ると、青峰と目が合った途端バツが悪そうに顔を逸らしたので『あ、やっぱブラジャー着けてねぇんだ』と思った。
筋肉ではない独特な柔らかさにそんな気がしたけど、間違いではなかったらしい。

震えて今にも泣きそうな瞳に、本当にヤベェかも、と本日何度目かの台詞が頭に浮かんだ。
こんだけ感度がいいコイツの胸揉んだらどうなんの?とか、巨乳好きの俺が"胸の大きさなんてどうでもいいから揉ませろ"って、いいたくなるくらい俺大興奮なんだけど。


「キスすんのはいいのに揉むのはダメなのかよ」
「っ…どっちも、ゆ、許した覚えはないよ…!アンタが勝手に…」
「さっきも舌入れたら嫌がったけど、嫌なら何で逃げねぇんだよ」
「それは、アンタが放さないから…!」
「放したら逃げんのかよ」
「そう、だよ」

当たり前でしょ、と殆ど涙目でだが歯向かう気満々で睨んでくる彼女に青峰は鼻で笑うと「じゃあ、逃がさねぇ」といってまた口を塞いだ。
頭の中ではいい加減解放してやるか、くらいは思っていたのに頭とは逆の言葉が口から出ていた。

いやまあしょうがねぇか。コイツの唇とかマジで柔らかくて気持ちいいし、汗だくだけどくっついてんのも嫌じゃねぇし、つーかコイツめちゃくちゃいい匂いだし。

しかし指摘したせいでさっきまでの空気が途切れたのか、胸を押し返す力が強くなり仕方なく口を離した。



「もう、おしまい…!」

見上げる目を見れば睨んではいるがやっぱり誘うように潤んでいてムラムラする。全然眼力ねぇし怖くねぇんだけど…これっぽっちも拒否できてないってコイツわかってんのかな。

「いいのかよ。やめちまって」

俺もコイツもお互い燃えるように熱くて、呼吸も荒く興奮しきっているのにおしまいだとか笑わせる。

肩に回していた手を彼女の頬に持って行き、頬や耳を軽く引っ掻けばそれだけでビクリと肩が跳ね潤んだ目が睨んでくる。お前だって止められる状態じゃねぇだろ。


その答え合わせのように邪魔な手を掴んで外させ、また口を塞げば「んぅぅ」と抗議の声が聞こえたもののすんなり大人しくなった。

後から思えばキスすら殆どしてないだろうコイツは抵抗の仕方もよくわかんなかったんだろうなと思う。あと感度の良さに頭が追いついてないんじゃないだろうか。
青峰ですら俺って結構上手いんじゃね?と思ってしまうくらいにはコイツはキスだけでトロっトロに蕩けていた。触れるだけでも身悶えされればこっちに気がなくても興奮せざるえない。


それ以前に触れない、という選択が出来なかった時点で青峰も大概なのだがその辺はとうの昔にどこかに追いやっていた。



「(最後までしてぇっていったらさすがにブチキレっかな…?)」

熱を吐き出すように息をすると同じように青峰の肩に額を乗せて自分以上に熱の篭った呼吸をくり返している彼女がいる。

自分はもうTシャツだけになっているが、コイツは暑いくせにジャージのファスナーを閉めていて余計に呼吸が苦しそうだった。
だからキスにかこつけてファスナーを下ろしてやったのだがジャージは肘までしか下ろせず、しかしさっきよりも濃い匂いがTシャツ越しにムアッと鼻腔をくすぐり眩暈がした。


自分もキスだけで股間がテント張ってるし、結構マジできついし痛い。
できるなら本番というか解放したくてたまらなかったが、そんなことをいおうものならこの女に真っ赤な顔で「ばっかじゃないの?!」と怒られるのが安易に想像出来て少し思いとどまった。

思いとどまったがムラムラする気持ちはどうしようもなくて丁度見えた耳をパクリと食べた。


「っあ…!や、ぁん」
「…っバカ、んな声出すんじゃねーよ…っ」

逃げる耳を唇と舌で追いかけ何度か甘噛みすれば簡単に腕の力が抜け、青峰に胸を押し付ける形で崩れ落ちてきた彼女を両腕で抱きしめた。


なんつーか、コイツめちゃくちゃ可愛く見えてきたんだけど。この控えめな柔いのが当たるだけでドキドキするっつーか、チン〇ヤベェ。

マジ止めねぇと取り返しつかねぇかも…と思ってはみたものの、くたりと力が抜けた妙に色っぽい彼女を覗き見たら、案の定我慢できずに半開きの口を食べるように口づけたのはいうまでもない。



この後、うっかり思いとどまったことを口にした青峰に、さっきまで赤い顔で身悶えていた女が「バカ!本当もうバカ!」と半泣きの顔で何度も罵倒し、痛いような痛くないようなチョップをして青峰を置いてきぼりにして帰ったのはまた別の話。




2019/07/24
青峰は童貞。