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よく考えたら何で合宿の日なんだろう。別に学校の日でも良くないか?
黒子君に送ってもらい、家に入ったところでそんなことを思ったがその時のはそこまで深く考えなかった。

そのせいで胃に穴が開きそうなくらい怖いことになるとは思っていなかった。



合宿の日、いつものように校門でみんなが集まるのを待っていると黒子君がやってきて挨拶してくれた。

さん。ノートを持ってきましたか?」
「……持ってきたけど、今渡すの?」

別にバスに乗ってからで良くない?と眉を潜めたが「全員集まるまでもう少しかかりそうなので今読みたいです」とさも当たり前にいわれてしまい、渋々バッグからノートを1冊取り出した。


「…これ1冊ですか?」
「な、何で?!」
「"NO.01"と書いてあるので続きがあるのかと」

私のバカ!と内心自分を罵倒した。確かにあるけど出したくない、恥ずかしい、という気持ちを込めて悲しそうな顔をするが黒子君はの頭を撫でるだけで「何冊あるんですか?」と追撃してくる。

「…………………………3冊………」
「なぁに、コソコソしてんだぁ?」

じっと見つめてくるガラス玉のような瞳に根負けして素直に答えると背後から低い声が聞こえ「ヒッ」と短い悲鳴と一緒に飛び上がった。


振り返ればイラついた顔の日向先輩がいて「お前ら朝からイチャつくのいい加減にしろよ」とキレられは顔から血の気が引いた。

どうやら1冊目を渡す際、が渡すのが恥ずかし過ぎてノートの引っ張り合いをしていたのがやたらと目立ったらしい。黒子君も頑固に手を放さなかったから日向先輩の気を引いてしまったようだ。

日向先輩の後ろでは伊月先輩とリコ先輩が盛大な溜息を吐いていて、私のバカ、と頭を垂れた。



「イチャついていません」
「ああ?んじゃその手にあんのは何だよ?!」
「これは、」
「交換日記じゃねぇだろうな?!」
「ち、違います!」

何でそうなるの?!しかも大学ノートで交換日記とかカモフラージュにしても安っぽくない?
日向先輩の言葉で狼狽したは否定はしたものの「だったら俺が見ても問題ないよな?」という主将に泣きそうになった。


「ダメです。それならボクが読んでからにしてください」
「テツヤ君?!」
「ああ?黒子テメー、先輩のいうことが聞けねーってのか?」
「日向〜後輩イジメんなって。甘酸っぱい交換日記くらいいいじゃないか。嫉妬は格好悪いぜ?」
「嫉妬じゃねーよ!」
「だったら俺と交換日記するか?」
「木吉!テメーは黙ってろ!」

フォローというか面白がってか伊月先輩と木吉先輩も寄ってきて「こいつ交換日記したことないから羨ましがってるだけだから」とか火に油なことをいって日向先輩を更に怒らせていた。
だから交換日記じゃないんですってば!


「交換日記じゃないなら何なんだ?」


至極当然に小金井先輩が聞いてきたがはいい淀んだ。だってこれを何だといわれてもよくわからない。脳内レポート?妄想試合?なんだそれはと自分でつっこんだ。



「青峰君対策が書かれている極秘ノートです」
「テツヤ君?!」

それ誤報!!いや、書いてた時はそのつもりだったけど!でも絶対間違ってるから!!!

黒子君のせいで声にならない悲鳴を上げると今まで遠巻きに見ていたリコ先輩や他の人達も反応してしまい、はいっそ倒れたいと思うくらい顔が青くなったのはいうまでもない。




2019/07/27
交換日記ってまだ生きてますよね…?(震え)