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「っちっていい子っスよね」
準々決勝も無事終わり、流れで黄瀬達海常の奴らと一緒に会場を出ると、隣を歩いていた黄瀬がいきなりそんなことをのたまい火神をぎょっとさせた。
隣を見れば前を歩くと黒子を眺めながら黄瀬がぽつりと「俺と目が合うときょどられるっスけど」と肩を竦め苦笑してくる。
そりゃオメーのことが苦手だからだよ、と喉元まで出かかったがすんでで留めてやった。
「なまじ格好いいって、罪っスね」
「自分でいうか?普通」
どこをどう思ったらそんな考えにいたるんだ?と顔を引きつらせたが、この会話がに聞こえていないことにホッと息を吐く。
いや、こいつのムカつく台詞は聞いてもっと幻滅してくれればいいと半ば本気で思ってるけど。
青峰の指令で黄瀬の足止めに向った火神達だったが選手控え室には黄瀬の姿はなく、一足先に奴のファン達に連れ去られた後だった。
海常の人達もうんざりというかムカついてる顔でいってたから常習犯なんだろう。
それで黒子がメールで呼び戻したのだがその黄瀬と一緒にまで戻ってきた時はかなり驚いた。
まさかまた泣いたり吐いたりしないかと慌てて黄瀬から距離をとらせたが当の本人はぼんやりと頬を染めていて話しかけても上の空だった。
今は普通に戻ったみたいで黒子と何か話してるみたいだが、タイミングとはいえ自分が黄瀬のお守りを任されたみたいな形になって少し面白くなかった。
それを顔に出してつまらなそうに黄瀬の話を聞いているといきなり噴出したので何だと眉を寄せる。どうやら思い出し笑いをしたらしい。
「んな面白いことでもあったのかよ」
「火神っちはあのお面笑えなかったっスか?…クク……ああ、っちごめんっス」
たまたまなのか振り返ったに黄瀬が謝ると理由を知っている彼女は困ったように眉尻を下げ、前を向いてしまった。
お面、といわれ思い出したものに火神も眉を寄せる。あれか。確かに見た時は笑ったが思い出し笑いをするほど面白いのか?と聞くと「え、うっそ!火神っちは面白くなかったんスか?!」と逆に驚かれた。
「面白いっつーか、いきなりカーネルの面なんかつけてたからこっちはビビったっつーの」
むしろ何でここでつけてんだよ、と思ったくらいだ。
そんな火神の台詞に噴出す声が聞こえ、後ろを振り返れば海常の先輩達が下を向き堪えるように肩を震わせていて呆れた。むしろあのお面でなんでそこまで笑えるんだよ。
しかしそこで火神はなんとなくピンときた。黄瀬と初めて会った時とかこいつの性格的にいいかねなそうな言葉が過ぎりムッとした顔でまだニヤニヤ笑っている奴を睨む。
「いっとくがもやらねーからな」
「ええ?俺いつそんなこといったっスか?」
「いってねーけど、お前ならそういうこといいそうだって思ったんだよ」
黒子ん時もそうだがお前諦め悪そうだし、と驚く黄瀬にいってやると「えええ〜?」とぼやいたが「じゃあ黒子っちとっち2人セットでレンタルしてくださいっス」といってきたのでこめかみがヒクついた。
「だからやらねーっつってんだろうが!レンタルもしねーよ!」
「ええ〜借りるくらいならいいじゃないっスか!」
「よくねぇし!」
誰がんなこと許すか!と憤慨すれば黄瀬が黒子に海常に来ないかと強請りだした。やっぱり諦めてなかったのかよ!
「え、嫌です。というか貸し出しもしてません」
「黒子っち〜!そこをなんとか!」
「なんとかも何も黄瀬君には黄瀬君のチームがあるじゃないですか。今更ボクと組んでも面白くないと思いますよ」
「そんなことないっス!黒子っちとっちが来てくれたら全国優勝も間違い無しっスよ!」
「断固拒否します」
振り返った黒子もうんざりとした顔を隠しもせずに「これ以上さんに近づかないでください」と拒絶していた。
その痛快な返しに内心ざまーみろと思ったが「ヒド!」とさめざめ泣く黄瀬を見ておろおろとするを見たらなんともいえない気持ちにさせられた。
お前、黄瀬苦手じゃなかったのかよ。こんな奴に優しさなんて1ミリもかけなくていいっての。
そんなことを考えたらまたムカついてきて火神はの手を掴むと、これ以上黄瀬を視界に入れさせない為にも足早に歩き、さっさと主将達が待っている学校へと向ったのだった。
2019/08/24
笑いを堪える海常の先輩が可愛い。早川は3年生に口を塞がれてます。