EXTRA GAME - 03
ビニール袋をお菓子でパンパンにして再戦チームが集合している体育館に向かいながらは溜息を吐いた。
景虎さんもみんなと一緒にいるんだよね。だとしたら紫原君や黄瀬君とも顔を合わせることになるのか…。嫌じゃないけど緊張するな…、と体育館に繋がる建物の出入口に入った。
広めの玄関ホールを抜けて体育館に向かおうとしたのだが思ったよりも広いみたいで少し迷ってしまった。
仕方なく戻って案内図を見て確認しているといきなり肩が重くなりビクッと肩が跳ねる。建物自体は開放してるけど他に人はいなかったし物音もなかったからかなり驚いた。
誰、と視線を動かせば冬の頃より髪が伸びた色黒夏男がニヤリと笑っていた。
「青、峰、くんか…」
驚かさないでよ…、と溜息と一緒に息を吐くと「俺がいちゃ悪いのかよ」とまたいつものようにこちらに体重をかけてくる。
それ重いからやめてほしいんですけど、と足を踏ん張って押し返すと彼は笑みを深めて更に体重をかけてくるから性質が悪い。
キミは何をしたいんだ、とジト目で見上げれば「何でこんなとこにいんだよ」と体重をかけるのをやめ、の首に腕を巻き付けてきた。
「景虎さんに買い物を頼まれたんですよ」
「ふぅん」
「そっちこそ何でこんなとこにいるの?」
まさかここに来てまでサボり?と周りに誰もいないことに訝しがれば青峰はさも当然に「お前がいるような気がしたんだよ」と返してきた。ジャイアンは何かセンサーでも持ってるのだろうか。
「こんな狭いとこで迷子になってんだから丁度良かっただろ」
「それは、確かに」
それなりに広いと思うのだけど迷子になったのは確かなので連れて行ってくれるらしい青峰にお礼をいえば、中学の、バスケが楽しかった頃に近い顔で彼が笑った。
「それよか、テツ達と一緒に来るかと思ってたのに何でこなかったんだよ」
「いや、呼ばれてないし」
「今はいるじゃねーか」
「今は用事があるから」
来ただけだよ、といおうとしたがその前に言葉を飲み込んだ。顔を上げたら青峰と目が合ったからだ。
その強い視線に言葉を紡げなくてただ見返していると、彼はの首に巻いていた腕を放し、肩を壁に押し付けた。
「てっきりテツか火神と付き合いだしたから来ねぇのかと思ったけど」
「…何でそんな話になるのよ」
いきなり変わった話にギクリというかドキリとして顔が熱くなる。前回誤ってこんな風に2人きりになってしまった時に黒子君のことが好きなんだということがバレているのでそのことをいわれたのだろうと思った。
だけど何故そこに火神まで出てくるのかわからずは困惑した。
今も黒子君に"そういう気持ち"を抱いてるのは確かだ。でもこの気持ちを伝えるかどうかは未だに決めてなくて、有耶無耶に友人を続けている。
火神はいい奴だし格好いいところも知ってるけど私と火神の関係は恋愛ではないので余計に困惑して眉を寄せた。
「どっちも友達だし、仲間なんですけど」
変なこというのやめてよね、とムッとした顔で睨むと、青峰は目を丸くしそれから「ぶはっ」と吹き出すと壁に手をつきとの距離を詰めてきた。
「じゃあ相変わらず誰のものでもねーんだな」
「……まぁ、はい」
その言い方はどうかと思うけど、間違いじゃない。のかな。
自分でいっててなんとなく寂しい気持ちになった気がして顔をしかめれば前触れもなく口を塞がれ慌てて腕を突っぱねた。
「ちょ!そういうのは、もうしないって!約束し」
「あー聞こえねぇ聞こえねぇ」
「ま、待って!待っ……っ」
彼の胸を思いきり押したのに軽々との手を取ると壁に縫い付け、了承もなくまた口を塞がれた。
黒子君が好きだとバレた時にもうこういうことはしないって約束してくれたのに!
お菓子を持ってる手で青峰の胸を叩いたがその手も取られ、持っていたお菓子の袋が落ちた。
ああ、中身が粉砕してるかも。と頭の片隅に思ったがこっちを見ろ、といわんばかりに唇を食む感触に身体が震え、思考が持って行かれる。
こうなるといつも青峰にいいように弄ばれるのだけど、今日のは少し優しいキスで戸惑った。
そう思うのは不本意にも何度かキスの回数を重ねてしまっているせいなのだけど、青峰も貪るような自分本位のキスじゃなくて、回数を重ねる度に角度やタイミングに変えてきての反応を伺ってるみたいだった。
今されてるのも前と少し違っていて、でもやっぱり思考を持って行かれるような熱さがあって手足が震えた。
気を張っていなければそのまま崩れてしまいそうな、キスだけで全神経が焼き切れてしまいそうな感覚にの体温が否応なく上がって眩暈がする。
そんなことをする青峰も、反応してしまう自分のこともよくわからなくて、呼吸だけがままならなくなっていく。
まるでおぼれていくようだ。
何度か角度を変えられ、唇全部を食べられたはぼうっとしてきた頭で熱っぽい吐息を漏らすと「やべぇな」とまだ唇がくっついたまま青峰が吐息交じりに嬉しそうに笑った。
「止まんねぇ…つーかお前が相手だといつまでもこうしていてぇって思っちまうんだけど」
「……なに、それ」
「なんでだろうな?なんもなければこのままどっかに連れ込みてぇくらいだけど……あぁ、今日はしねーよ。…それに、そろそろ戻らねぇと誰かが来そうだしな」
つらつらと恐ろしいことをいうジャイアンに赤い顔でドン引きしていると、彼は冗談だと笑った。何気に目が冗談に見えないんですが…。
そんな危険人物を恐々見上げていれば、誰かがここを通るかもしれないといわれ、まだニヤニヤしてるジャイアンに軽く頭突きをした。
「うお!何すんだテメー!」
「何すんだ、は、こっちのセリフ、よ!人のく、唇で遊ぶな!」
またキスをしようとしてきたところに頭突きをしたので勢いはつけれなかったものの彼の額にちゃんとヒットした。
驚き放れた青峰を睨み、こっちに来るな!という意思表示と一緒に落としたお菓子の袋を掴んで振り回すと「そんな顔でいわれても説得力ねーぞ、お前」と呆れられた。顔が赤いだけだバカヤロー。
「それだけじゃねぇんだけど」
「……ど、どういうことよ」
むしろ顔が赤いだけでこういうことすると思ってんのかよ、と溜息を吐くジャイアンに首を傾げると「もう1回すればわかるんじゃねぇか?」とこっちに手を伸ばしてきたので慌てて振り払った。
その手に乗るか!と睨めば青峰は鼻で笑って歩き出す。
「ま、誰のものになってねぇなら、まだ当分は俺のものってことだろ」
「何で?!」
何でそうなるの?!と困った顔をすれば、青峰は今度は悪戯げに笑い、素早くの肩に手を回すと「オラ、さっさと行くぞ!」と半ば無理矢理を引っ張り歩き出した。
2019/10/12
俺のものは俺のもの。お前のものは俺のもの。