EXTRA GAME - 13


ちゃん、真ちゃんのことマジでビビってたから後でフォローしとけよ」

練習が終わり、黄瀬の提案で2年だけでマジバに行くことになったんだけど、着替えてるちゃんを待つ間、俺はこっそり真ちゃんこと緑間真太郎に話しかけた。

実は先程の練習中、珍しく声を荒げた真ちゃんが紫原と言い争いをしたのだ。組んだ数日は特に問題なかったがあのプライドの高い秀徳のエース様のことだ。些細な違いに苛立ちを募らせ爆発したのだろう。


秀徳に入って我慢を覚え見方を変え、パスまで出せるようになったが、慣れ親しんだ帝光中時代を思い出したのか、はたまた同じ地雷を踏まれたのか勢い余って怒鳴りつけるさまは高尾にとっても意外で驚いていた。

最初こそ似たように癇癪を起したこともあったけど、大体宮地さんにどつかれて大人しくなったからな。

紫原達だとそういう感情も出しやすいのかと感心したけど傍らにいたちゃんは違ってたようで瞬時に顔面蒼白になっていた。


ちょっと震えてたもんな、と今は普通の顔色に戻ったちゃんを見やり、目の前のエース様に目をやるととても満足そうにしていて内心笑った。


合宿で倒れたちゃんを介抱して以来、真ちゃんは何かとちゃんを気にかけている。
それは高尾も似たようなものだけど他人にあまり興味を示さない真ちゃんが自分と同じように世話を焼く姿は正直面白かった。

だから今後も仲良くできるように俺が橋渡しをしてあげたんだけど、心配する程ちゃんは真ちゃんのことを怖がってはいないみたいだ。
前はもっと怖がってた気がするけど懐いたのか慣れたのか。どちらにしても楽しげに話してる2人を見て俺も満足げに笑った。



「ぶは!緑間っち達もしかしてパッピーセットなんスか?」

世話の焼ける妹みたいなもんかもなぁ、と思いつつちゃんとおもちゃの袋を開封して品評会をしていると黄瀬達がやってきて俺達のトレイを見て笑った。

「だったらなんだというのだよ」
「足りるんですか?」
「足りなかったらもう1回行くんだと」
「それってまたパッピーセットを注文するってことっスよね?」

ブレないっスね!と笑った黄瀬はちゃんの前であり真ちゃんの隣に座り、続いて来た黒子はちゃんの隣のテーブルに座った。


「何故俺の隣に座るのだよ」
「えー?いいじゃないっスか隣に座るくらい!どうせっスから黒子っち達のテーブルもくっつければよくないっスか?」
「更に鬱陶しくなるのだよ!」


キレた真ちゃんに俺は内心『あーあ』と苦笑した。真ちゃん的にはこのトライアングルの光景が良かったのになと思う。
本人は否定するだろうけどちゃんと俺を置いて話すのが落ち着くスタイルみたいなのだ。

主に俺がべらべらと喋ってちゃんが合いの手を入れて真ちゃんがつっこむ。話数は減るんだけど真ちゃんが妙に楽しそうにしてるから多分間違いではない。

そんな空気を黄瀬に壊されたものだから真ちゃんの機嫌は急降下したけど、なんだかんだ人がいい真ちゃんが跳ねのけられるはずもなく。
黒子の隣に桃井さんが座ったのもあってガタガタとテーブルを寄せられると真ちゃんは一層嫌そうに眉間に皺を寄せた。



「緑間。一応決起集会なんだ。その顔はしまっておけないのか?」
「元からこういう顔なのだよ」

次いでやって来た赤司に真ちゃんは眼鏡のブリッジを上げると、とうとうそっぽを向いてしまった。
本当に腹が立てば帰ってしまうだろうけどこれなら大丈夫か、と思った高尾は視線を赤司のトレイに注いだ。普通にセットを食べるらしい。

なんかスゲー金持ちとか住んでる世界が違うとか噂で聞いてたからてっきり買い方すら知らないんじゃねぇかと思ったけど問題はないようだ。

同じことを思っていたらしいちゃんが黒子にひそひそと聞いているのを聞き耳たてていると中学の時に何度か買い食いなどしたりしているからその時に買い方を覚えたようだ。やっぱり住んでる世界が違うらしい。


。そんなに俺がここに来ていることが不思議か?」
「ううん!そんなこと、ないです!」

話し声は聞こえなかったはずだが黒子の目の前に座ったこともあり何か察した赤司がじっとちゃんを見やると彼女は震えた声で首を横に振っていた。
ついでに赤司はこっちにも視線をくれてきて顔が引きつってしまう。

ちゃんと同じことを考えていたことがバレたのか、これ以上ちゃんに近づくんじゃねーよ、という牽制か。


後者は黒子の誕生会で宣言した通り、赤司は一定以上ちゃんに近づく奴に容赦がない。
同校の黒子と火神は大目に見てるみたいだがこっちに向ける視線の痛いのなんの。練習中とか針の筵かっていうくらい見られて肩が凝るどころの話じゃなかった。



再戦が終わるまではこのままなんだよなぁ、と考えているとハンバーガーを山盛りで買ってきた火神と青峰が何やらケンカしてこちらにやって来た。

どうやら写真集だかなんだか買って所持金が少ない青峰に火神が少し奢ったらしい。隣のちゃんが「やっぱり…」とうんざりとした顔で見ていたのでこっちもこっちで大変だなぁ、とちゃんの頭を撫でてあげた。
そんなことをされると思ってなかったちゃんはこちらに振り返ると照れくさそうにはにかむ。

一段と柔らかい彼女の笑みに俺もつられて破顔してしまうのだけど、赤司の視線がこっちに向くと同時に何事もなかったように手を離し飲み物をすすったのはいうまでもない。

ある意味黒子達よりも厄介なんじゃねーかな、赤司の奴。




2019/10/22
ラスボス赤司。

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