EXTRA GAME - 14


今回の再戦で集められた決起集会だったけど蓋を開ければただの学校帰りの高校生、な空気になっていた。
しかも人数が多いからかまとまった話などするはずもなくみんな自由に話し食べている。も馴染むように話をしていたが途中で席を立った。


「どしたのちゃん」
「喉乾いたから何か買ってくるよ」

話の途中で立ち上がったに高尾君も顔をあげたが愛想笑いで返し財布と携帯を持ってカウンターへと向かった。

「ヤバかった…」

高尾君にそういったもののは注文カウンターをすり抜け外へと出ていた。出入口のレンガ造りの花壇の淵に座ったは大きく息を吐く。


黄瀬君のオーラを長時間浴びるのは無理があった。小まめに接触して慣れてきてはいるものの、今日みたいなシチュエーションはあるようでなかった。

土田先輩と一緒に狩りに行った時も前の席にいたけど斜めだったしゲーム画面ばっかり見てたし。黄瀬君だってここまでを見て話しかけたりしてこなかった。


そう、黄瀬君はちゃんともいる想定で話してくれているのだ。


他の人なら普通のことなのに黄瀬君に対しては非日常な光景に見えて第三者気分で話していたのはいうまでもない。
第三者という壁を作っても無理だったし、隣に黒子君がいても耐えられず逃げ出してきてしまった自分にしまったな、と溜息を吐く。

挙動不審なのはバレてるだろうけど不快にさせてないといいなぁ、と落ち込んでいればカラン、とお店のドアが開く音が聞こえた。



「大丈夫かよ」
「うん。なんとか…」

出てきたのは火神で、どうやら心配して見に来てくれたらしい。黒子君同様いつも申し訳ない、という気持ちでへらりと笑えば「まだ青白いな」と頬を指の腹で撫でられた。

「吐き気は?」
「そっちは大丈夫そう」

隣に座り込んだ火神は頬を撫でていた手をの頭に持ってくるとぽんぽん、と優しく撫でてくる。
前は豪快に髪をかき混ぜるような撫で方が多かったけどいつの間にかこういう優しい撫で方を混ぜてくるようになった。


そういう時は大抵が落ち込んでいる時にされるのだけど、火神に物凄く気遣われてる気がしてむず痒くなる。むず痒くなるとついでに口許も緩んでしまって笑みを浮かべれば「なんだよ」と声をかけられた。

「ううん。なんでもない」
「じゃあ何で笑ってんだよ」
「…なんか落ち着くなと思って」

火神の手が大きいせいか撫でられるテンポなのか、の心を落ち着かせてくれる気がして笑みを浮かべたまま、されるがままに目を閉じると「そうかよ」と何故か肩を抱かれ引き寄せられた。それは落ち着かないんだけども。


「普通に話してると思ったけどダメだったんだな」
「テツヤ君いるから大丈夫だと思ったんだけどね…キセリョのオーラ半端なかった」

勿論黄瀬君と話せて嬉しいし楽しいのだけど、こう、体力というか生命力的な何かを吸い取られてるようで、どんどん疲弊していくんだよね…。



怖さは大分薄れたものの潜在意識なのか彼に対して緊張感はずっと残ってて家に帰ってきてダウンすることもままあった。
何をどうすれば普通に接することが出来るのか、と真剣に悩んでいると誠凛のエース様は「いいんじゃね?慣れなくて」と気軽な声で返してきた。

「他人事だと思って…」
「別に今のままでも十分だろ」

これ以上黄瀬と仲良くなってもしょうがなくね?との顔を覗き込んできた顔は少しつまらなそうな感じだったがはうーんと唸った。

確かにキセキの世代が大集合でもしなければ、ここまで黄瀬君と話すことはないかもしれない。ゲームだって森山さん達が卒業して以降、誘われなくなったし。
森山さんからは定期的に連絡きてるけど。あ、そのことで黄瀬君に話しておかなきゃいけないことがあったんだ、と思い出しもう少し頑張るか、と深呼吸をした。


「戻んのか?」
「うん」

寄りかかっていた火神から離れると彼は少し眉をひそめまだ青白い、と指摘してくる。吐かないから大丈夫、といっても心配してくれる火神には彼の手を握ると立ち上がった。

「体育館で宣言しちゃったしもう少し頑張ってみるよ」

黄瀬君と紫原君に慣れるのが目標で今年はプラスしてもう少し話せるようになる、といってしまったのだ。
全裸で告白はないにしても告白はさせられる可能性があるので少しでも頑張らねば、と握り拳を作ると、火神は呆れた顔で溜息を吐き立ち上がった。



「ったく、ヤバくなったらトイレにでも逃げろよ」
「はーい」

こいつ本当にわかってんのか?みたいな顔で見てくる火神の手を引きお店の階段に足をかけたがふと思い出し振り返った。


「ありがとね、火神君」


階段を上ったお陰でいつもよりも視線をあげずに火神にお礼をいうと彼は目を丸くして、それから握られてない方の手を首の後ろに持って行くとどこか落ち着かなそうにガシガシと掻いた。

「このくらいならいつでもしてやるよ」

そういった火神は繋がれたの手を引っ張ると、彼は少し腰を屈めの頬に顔を寄せた。耳元で聞こえるリップ音と共に放れた火神の顔を見たはワンテンポ遅れて頬を染めると空いてる方の手でその頬を隠した。


「火神君。ここ日本なんですけど…」

というか何故このタイミングで?と困った顔をすれば火神もつられたように頬を染め「べ、別にいいだろ!」と誤魔化すように声を荒げ、の手を引っ張りお店のドアを開けたのだった。




2019/10/23
火神も青峰もとにかく触りたい。(次点黄瀬)